BLUE EYES

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>アフガニスタンからの手紙

> アフガニスタンからの手紙を転送します。
> 一人でも多くの方に読んでいただきたいとのことですのでご紹介します。
>
> 国連難民高等弁務官カンダハール事務所で働いていらした方
> −千田悦子(ちだ・えつこ)さんという方の手記です。
>
> 千田さんは、国連難民高等弁務官カンダハール事務所で仕事を
> していましたが、オサマ・ビン・ラディン氏をかくまっているとされる
> タリバンの本拠地へのアメリカの軍事行動などの危険性が出てくる中、
> 一時的に勤務先をパキスタンに移転するという措置で、「避難」を
> していますが、その緊急避難の最中に書かれたものです。
> 以下、千田さんの手記です。
>
> *****************************
>
> 報道機関の煽る危機感
>
> 9月12日(水)の夜11時、カンダハールの国連のゲストハウスで
> アフガニスタンの人々と同じく眠れない夜を過ごしている。私のこの
> 拙文を読んで、一人でも多くの人が アフガニスタンの人々が、
> (ごく普通の一人一人のアフガン人達が)、どんなに不安な気持ち
> で9月11日(昨日)に起きたアメリカの4件同時の飛行機ハイジャ
> ック襲撃事件を受け止めているか 少しでも考えていただきたいと
> 思う。テレビのBBCニュースを見ていて心底感じるのは 今回の事
> 件の報道の仕方自体が 政治的駆け引きであるということである。
> 特にBBCやCNNの報道の仕方自体が根拠のない不安を世界中に
> あおっている。
>
>  事件の発生直後(世界貿易センターに飛行機が2機突っ込んだ
> 時点で)BBCは早くも、未確認の情報源よりパレスチナのテログル
> ープが犯行声明を行ったと、テレビで発表した。それ以後 事件の
> 全貌が明らかになるにつれて オサマ.ビン.ラデンのグループの
> 犯行を示唆する報道が急増する。その時点でカンダハールにいる
> 我々はアメリカがいつ根拠のない報復襲撃を また始めるかと不
> 安におびえ、明らかに不必要に捏造された治安の危機にさらされ
> る。何の捜査もしないうちから、一体何を根拠にこんなにも簡単に
> パレスチナやオサマ・ビン・ラビンの名前を大々的に報道できるの
> だろうか。そしてこの軽率な報道がアフガンの国内に生活をを営
> む大多数のアフガンの普通市民、人道援助に来ているNGO(非
> 政治組織)NPOや国連職員の生命を脅かしていることを全く考慮
> していない。
>
>  1998年8月にケニヤとタンザニアの米国大使館爆破事件が
> あった時、私は奇しくも ケニヤのダダブの難民キャンプで同じく
> フィールドオフィサーとして働いており、ブッシュネル米国在ケニ
> ヤ大使が爆破事件の2日前ダダブのキャンプを訪問していたと
> いう奇遇であった。その時も物的確証も無いまま オサマ・ビ
> ン・ラデンの事件関与の疑いが濃厚という理由だけでアメリカ
> (クリントン政権)はスーダンとアフガニスタンにミサイルを発射し
> た。スーダンの場合は、製薬会社、アフガンの場合は遊牧民や
> 通りがかりの人々など 大部分のミサイルがもともとのターゲット
> と離れた場所に落ち、罪の無い人々が生命を落としたのは周知
> の事実である。まして 標的であった軍部訓練所付近に落ちた
> ミサイルも肝心のオサマ・ビン・ラデンに関与するグループの被
> 害はほぼ皆無だった。タリバンやこうした組織的グループのメン
> バーは発達した情報網を携えているので、いち早く脱出してい
> るからだ。前回のミサイル報復でも 結局 犠牲者の多くは 
> 子供や女性だったと言う。
>
>  我々国連職員の大部分は 今日緊急避難される筈だったが
> 天候上の理由として国連機がカンダハールに来なかった。とこ
> ろがテレビの報道では「国連職員はアフガニスタンから避難し
> た。」と既に報道している。
>  報道のたびに「アメリカはミサイルを既に発射したのではない
> か。」という不安が募る。アフガニスタンに住む全市民は 毎夜
> この爆撃の不安の中で日々を過ごしていかなくてはいけない
> のだ。更に、現ブッシュ大統領の父、前ブッシュ大統領は 19
> 93年の6月に 同年4月にイラクが同大統領の暗殺計画を企
> てた、というだけで 同国へのミサイル空爆を行っている。
>  世界史上初めて、「計画」(実際には何の行動も伴わなかっ
> た?)に対して実際に武力行使の報復を行った大統領である。
> 現ブッシュ大統領も今年(2001年)1月に就任後 ほぼ最初
> に行ったのが イラクへのミサイル攻撃だった。これが単なる
> 偶然でないことは 明確だ。
>  更にCNNやBBCは はじめからオサマ・ビン・ラデンの名を
> 引き合いに出しているが米国内でこれだけ高度に飛行シス
> テムを操りテロリスト事件を起こせるというのは大変な技術で
> ある。なぜ アメリカ国内の勢力や、日本やヨーロッパのテロ
> リストのグループ名は一切あがらないのだろうか。他の団体
> の策略政策だという可能性は無いのか?
>  国防長官は早々と 戦争宣言をした。アメリカが短絡な行動
> に走らないことをただ祈るのみである。
>  それでも 逃げる場所があり 明日避難の見通しの立ってい
> る我々外国人は良い。今回の移動は 正式には 避難
> (Evacuation)と呼ばずに 暫定的勤務地変更(Temporary 
> Relocation)と呼ばれている。ところがアフガンの人々は一体
> どこに逃げられるというのだろうか? アメリカは隣国のパキ
> スタンも名指しの上、イランにも矛先を向けるかもしれない。
> 前回のミサイル攻撃の時は オサマ・ビン・ラデンが明確な
> ターゲットであったが 今回の報道はオサマ・ビン・ラデンを
> 擁護しているタリバンそのものも槍玉にあげている。
>  タリバンの本拠地カンダハールはもちろん、アフガニスタン
> 全体が標的になることはありえないのか? アフガニスタン
> の人々も タリバンに多少不満があっても 20年来の戦争
> に比べれば平和だと思って積極的にタリバンを支持できな
> いが 特に反対もしないという中間派が多いのだ。
>
>  世界が喪に服している今、思いだしてほしい。世界貿易セン
> ターやハイジャック機、ペンタゴンの中で亡くなった人々の家
> 族が心から死を悼み 無念の想いをやり場の無い怒りと共に
> 抱いているように、アフガニスタンにも たくさんの一般市民が
> 今回の事件に心を砕きながら住んでいる。アフガンの人々に
> も嘆き悲しむ家族の人々がいる。世界中で ただテロの“疑
> 惑”があるという理由だけで、嫌疑があるというだけで、ミサ
> イル攻撃を行っているのは アメリカだけだ。世界はなぜ 
> こんな横暴を黙認し続けるのか。このままでは テロリスト
> 撲滅と言う正当化のもとに アメリカが全世界の“テロリスト”
> 地域と称する国に攻撃を開始することも可能ではないか。
>
>  この無差別攻撃や ミサイル攻撃後に 一体何が残るとい
> うのか。又 新たな報復、そして 第2,第3のオサマ・ビン・ラ
> デンが続出するだけで何の解決にもならないのではないか。
> オサマ・ビン・ラデンがテロリストだからと言って、無垢な市民
> まで巻き込む無差別なミサイル攻撃を 国際社会は何故 過
> 去に黙認しつづけていたのか。これ以上 世界が 危険な方向
> に暴走しないように、我々も もう少し 声を大にしたほうが良
> いのではないか。
>
>  アフガンから脱出できる我々国連職員はラッキーだ。不運
> 続きのアフガンの人々のことを考えると 心が本当に痛む。
> どうかこれ以上災難が続かないように、今はただ祈っている。
> そしてこうして募る不満をただ紙にぶつけている。
>
>          千田悦子    2001年9月13日 筆
>
> ******************************.
> >
> > 「手記」はできるだけ広範囲の方々に読んでもらいたい、ということですの
> > で、
> > 他の方に紹介してくださって構いません。


(東雲追記:0201.29)
 上の手記は、同時多発テロ発生直後に、とあるMLで流れてきたものです。

 あれから4ヶ月が過ぎました。タリバン政権は崩壊し、暫定政権が発足しました。しかし、米軍は今でも空爆を続けています。毎日のように死傷者が出て、「誤爆」の報道もやみません。空爆が終わるまで、この手記はTopからリンクしたままにしておくつもりです。

 アフガニスタンでは新しい国づくりが始まっています。日本で開催された復興支援国際会議も終わり、前向きに歩き始めたようにも見えます。それでも、彼の地の抱える問題は未だ山積みです。「あの同時多発テロが起きなければ、アフガニスタンは忘れられていたままだったかも知れない」とも言われますが、そうであるのなら、関心を持ち続けることこそが問題解決への第一歩なのかも知れません。そしてそれは、アフガニスタン一国だけの問題では、ないはずです。


>関連リンク集

日本のアフガン少数民族難民申請者の現在
 「果てしない移民たちのためのホームページ」内。どこか遠い国の問題ではなく、日本国内で起こっている問題です。

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