……と言えばすっかり∀(ターンA)ガンダムのご時世ですねぇ。月の民<ムーンレィス>と地球人の物語となっているだけに、月のモチーフは多用されており、∀の面白さに一役買ってくれています。何せ相手が月の女神の名を抱く「ディアナ」様、しかも本物のかぐや姫とあってはかないません。
ですが、普段ふらっと見上げる月で思い出すのはどうしてもGXの方なのです。GXの方が放映が早かったというのも勿論ですが、∀のような「人の住んでいる月」よりも、GXでの「凍れる記憶の眠る月」の方が、現在の月に近いように思えるからかも知れません。彼の地に足跡が残されながらも、その後訪れるもののない冷たい場所。手が届くはずなのに届かない場所。青白い光でいつも見つめている神秘の星。そんな身近な月が、GXでは描かれていました。第一話や最終話は言うにおよばず、「全てはあの蒼き月光の向こうにある」という第三十七話「フリーデン発進せよ!」ラストのナレーションなんかもゾクゾクするほど恰好良いんですね。月面基地の自動防衛システム(D.O.M.EとMWGビット)を指して「月には見えない悪魔が棲んでいる」と言ってみせたりとか。
∀はおとぎ話で、GXはリアルだと言い換えてもよいのかも知れません。∀にも痛烈なメタフィクション的表現は散見されますが、ファーストガンダムからリアルタイムで付き合って来た「戦中派」なわたしにはグサグサグサっとくるような台詞や状況がてんこもりなGXの方が、身につまされる部分は多いものです(苦笑) それが却って、実際の月から受ける印象がまるで鏡のように思えるGXの月を連想させるのかも知れません。
と書くとなんか∀の月にはリアリティがない、と言ってるようなんですが、さすがにもうしばらくしたら舞台は月になってるんじゃないかと思うので印象がまた変わってくるのでしょう。ただ、個人的な趣味では、サントラアルバムでの月のヴィジュアルモチーフの使い方はGXの方が恰好良くて好きです(^^) ∀のそれは凄く女性らしくて優しいイメージで、名曲「MOON」が全てを表しているようでもあって、これはこれで本当に好きなのですが……わたしはあのGXの神秘的でクールで物静かな月がやはり、好きなんだなぁ……と。
(9912.11)
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