Camille Laboratory Top機動戦士Ζガンダム>詩編

ホライズンを追いかけて

夢を見たんだ。

夢?

そう──久しぶりに、うなされないヤツをね。

でしょうね。どんなの?

ウン……
何にもないところに居るんだ。
何にもない、真っ白で、
ただ、だだっ広いだけのところにね。

 白い、白い、白い世界。
 色はなく 音もなく
 感覚すらも
 白い闇に溶けこんでゆく

ふゥン……それで?

本当に何もないのか……って、
周囲を見回してた。
そしたら、地平線の向こうで
何かが光ったのさ。
俺は思わず駆け出した。
絶対にあそこまで行くんだ……ってね。

それから?

それからずっと走ってた。
真っ白な地平をね、ただ走ってた。
そしたらね、何処に居たと思う?

分からないわ。

海の真ん中さ。何処を見たって青い青い世界。
俺はサカナになっててね、
今度は海と空の境目指して
必死になって泳いでた。

 青い空と青い海
 青と青とが静かに争うその向こう
 一体何があるというのか

ただひたすらに水平線を追いかけて
あぁ、もうすぐだと思って 俺は
空中へと飛び上がった
……と思ったら、

思ったら?

俺の体は宙を舞っていたのさ。

トビウオだったのね。

 自由の翼を大きく広げ
 想いよとどけ、空の彼方へ
 遥かに遠く、光の地平へ

空高く俺は翔び続けた。
いつしかスカイ・ブルーは群青になってね
気が付いたらそこは宇宙だった。

 星の海に独り浮かんで
 探してみるけど見付からない
 答えは何処にあるのだろう

それでも僕は走り続けた。
答えの見えない地平線を追いかけて……
もう ここまで来たら、
走るために走ってる、って気分でね。
それで、まぁ、目が覚めた訳なんだけど……
──何だか変な夢だったな。

そうね……

ん……まぁね。
うなされはしなかったけど、何だか……

何だか?

いや……何でもない。


……ナントナク、
『俺ソノモノ』ヲ見テシマッタ気分デ……


 そう、誰でも
 各々の地平線を追いかけている

 少年はそれを希望と呼ぶかも知れないし、
 青年に尋ねれば理想と答えるだろう
 少女は夢と名付けているかも知れないし、
 或いは想い人の名を挙げるだろう

 何だって良いのだ、そう、誰でも
 想いだけが目を向けさせた
 各々の地平線を追いかけている
 追いかける、ただそのことだけが
 足を彼方の地へと向かわせる

 いつか見える地平線
 いつか見えるその刻は
 百八十億光年の彼方から
 この自分を呼んでいるのだ


(8912.08)


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