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空想遊戯第3回公演 異境線Δデルタ
空想遊戯/1993.7.29-8.1/SPACE107@新宿/作・演出:小粥よう子

 今までに見た中で一番好きな芝居です。かなうことなら再演して欲しいです。

■キャスト
 デル太:小粥よう子
 アタンタ:飛田展男

 ヴァイス:戸部公爾
 ナジャ:ポポ弥生
 ペルソナ:津曲健仁
 カナメ:飛田直美
 冒険野郎:押火淳

 ガイド:毬村いづみ
 アノミ:伊藤はるか
 トウル:鈴木達雄
 子供A(にわとり):富沢稲子
 子供B(ぶた):北薗ひとみ
 子供C(うし):岩永哲哉
 子供D(ドラゴン):吉川貴昭
 イドラ((声)):茶風林
 ジェネシス:内田和美

■おはなし
 その頃、人間はキメラを作る技術を手に入れていた。翼のある馬や人間、そうした家畜を作っては狩りをして楽しむ人たちがいた、そんな世界の物語。
 フェミナプールに暮らす少年デル太は、アタンタという青年と親しくなる。フェミナプールの住人にとって、この町を囲む壁の向こうへ行って「任務を果たす」ことは名誉なこととされていた。しかしアタンタは、一度壁の向こうへ行ったのにフェミナプールに帰ってきたということで臆病者とのそしりを受けていた。アタンタはひがな好きな絵を描いていて、デル太にパウル・クレーの天使の絵を見せてくれた。
 そんなある日、アタンタが再び壁の向こうへ消えた。デル太のガールフレンドも居なくなり、デル太は壁の向こうへ行くことを決意する。任務でもないのに壁の向こうへ行くことは許されていないので、デル太は下水道を通って壁の向こうを目指す。下水道でデル太は不思議な竜・イドラに出会う。
 ようやく壁の向こうに辿り着いたデル太の前にアタンタが現れる。がしかし、彼はデル太の知っていたアタンタとはまるで別人だった。微かな狂気にも似た気配をまとい、残忍な光を宿した目でデル太を見る彼。顔かたちはうりふたつなのに、まるで違うアタンタ。彼はキメラを狩るハンターで、先日の狩りで重傷を負った際に、フェミナプールのアタンタから臓器や皮膚を移植して一命を取り留めていたのだった。フェミナプールの人間はハンター達のドナーとしてのクローンだったのだ。
 狩りのために作られた悲しい天使。ドナーとして培養されていただけのフェミナプールの人間たち。この世界に疑問を抱くデル太は、イドラの力を借りてこの禍禍しい秩序を打ち崩した。
 全てが終わり、これからどうするのかと聞かれたアタンタは応えた。「俺は、絵でも描くかな」と。

■感想
 うわーっなんか全然うろ覚えだから嘘書いてるかもーっ(i_i)アタンタさんはドナーとハンターの都合二役状態でとてもおいしかったです。ドナーの方はベレー帽被って白のカットソーにベストという優しげな感じ。ハンターの方は「3D平清盛(上様)」とでも呼びたいような黒を基調にしたマント付きの衣装で、銀の鎖がアクセサリー代わりというものでした。
 アタンタ・ドナーがフェミナプールに帰ってきたということは、彼はこの世界の真実を知っている訳です。なのに、取り乱したり、フェミナプールの住人に吹聴することなどなく、ただ静かに現実を受け入れているのです。周囲から白い目で見られながらも、その穏やかな、しかしどこか悟った風な余人と違う雰囲気が、彼の知ってしまったもの――そして彼が伝えられないもの――の重みを伝えています。アタンタが再び壁の向こうへ消えるとき、彼はその優しい眼差しのまま、もう自分は帰ることはないだろうとデル太に別れを告げたのでした。そんなアタンタだったから、デル太は彼に会いに行こうとするのです。アタンタがデル太に見せた天使の絵。アタンタ・ハンターが重傷を負った狩りのターゲットもまた天使であり、結果、アタンタ・ドナーは帰らぬ人となってしまうのでした。ラストのアタンタの台詞で、アタンタ・ハンターがアタンタ・ドナーの趣味だった「絵」を口にするあたりの衝撃ったらなかったです。アタンタ・ハンターは絵を描くような人には少しも見えなかったのに……!あと、ラストでの「真実などない……いや、ひとつだけある。」というような台詞もとても良かったです。

 ハンター達のボス・ヴァイスがなかなかに悪の親玉風で格好良くって、これで戸部さんのお名前を覚えました。押火さんの冒険野郎(デル太の道行き指南役だったかと)は、前作のコギトとは正反対の熱血ヒーロー風でとてもハマリ(^^)津曲さんのペルソナ(ヴァイスの部下)がとてもとても良い役で(この人がヴァイスを裏切る風に進言して事が治まったのですな)、「これがアニメなら飛田さんにペルソナをやって欲しい〜」などとちぃと勘違いした感想を抱いた人間がちらほら。ポポ弥生さんのナジャはまた凄いイイ感じの色っぽさでした。
 あと、壁の外の住人たちが美術館を訪れるシーンで、ガイドが客席に向かって両手を広げて「神様です」と紹介して舞台上の全員が頭を下げたときには場内爆笑(^o^)下水道を行くデル太の「ゲッ、ゲッ、下水道〜」の歌もぐー!でした。

■うらばなし
 この時は楽屋まで行って出待ちをさせていただきました。「男性部屋」「女性部屋」「中性部屋」とあって、デル太役の小粥さんは男性部屋、ジェネシス(天使)役の内田和美さん(男性なんですけど、物凄く色白で綺麗(*^_^*))などは中性部屋でした。
 小粥さんを通じてチケットを予約したので、高橋陽一先生のサイン色紙をいただけたのですが、それを持って飛田さんにサインを貰おうとする人の列ができていました。皆ちゃんと(高橋陽一先生に)若島津を描いて貰っていましたね。

 あ、うらばなしといえばうらばなし。このとき、FCから花輪をお送りしたのです。えぇ、パチンコ屋に置かれるようなでっかい花輪を……(^^;このことをひたすらお詫びしたのですが、後日耳にした話で、「公演終了後、花輪についていた幕(飛田展男様とか書いてあったもの)をマント代わりに付けていた飛田さんが、『次の役が決まった。お前は花輪だ!』とか言われて、すかさず『そりゃないぜベイビー』と(まる子の)花輪君の真似で応えたらしい」というのがありまして、ちょっとほっとしました。以降、FCからお花をお贈りするときには必ずアレンジメントでお願いしています。いますともっ。

 今になってみると、市東亮子作「LIVE!!」「LIVE RUN」が、どことなくこの話を思い出させるものです。ドナー用クローンとキメラしかだぶってませんけど(^^; クローン羊のドリーが出てきたときに、この「異境線Δデルタ」の話を思い出して、とあるMLで紹介したら、「東京ではこんな芝居をやってるんですか!?」という反応をいただきました。東京だからというより空想遊戯だからなんですけど〜。今にしてといえば、岩永哲哉さんも出てらしたのですね〜。


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