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光の字架



Cross of the Light
第十四話「俺の声が聞こえるか!」より




 十五年かけて作られた街が廃墟となるまでに、そうは時間は掛からなかった。後に『フォートセバーンの赤い夜』と呼ばれることになる業火は家々を焼き尽くし、戦後の世界でここまで生き延びてきた人々の命を次々に奪っていった。

 それから三日目の朝、細面の少年が一人、この呪われた街を目指して一面の雪の中を歩いていた。彼の名はカリス・ノーティラス。十五歳でフォートセバーン自衛部隊の隊長を務める非凡な少年である。明るい金髪に彩られた色白の面は、この北の大地を覆う雪のようにどこかしら青白くも見える。左腕を庇うように歩く彼は、一台の車をその目にとめた。車からは長身の青年が降りて、カリスに駆け寄って来た。

「おかえりなさい、隊長」
「ノルド分隊長……」
 フォートセバーン自衛部隊北方分隊長のノルドが、カリスを迎えに来てくれたらしい。カリスよりもずっと年上のノルドは、その身を屈めるようにして少年の顔を覗きこむと、車を指差した。
「フォートセバーンに戻るのでしょう?乗ってください」
「ありがとう」
 車のドアを開けて、ノルドはカリスに尋ねた。
「ベルティゴはどうしたんです?」
「フリーデンに預けてきました。修理をお願いしているんです。」
 カリスが車に乗り込みながら応えると、ノルドも運転席に回ってシートについた。
「フリーデンというと、例のバルチャーですか?ガンダムを連れていた」
「えぇ。彼らは信用できますから。」
「へぇ……ま、それは後でゆっくり伺いましょう。先に、私の話を聞いておいてください」
 ノルドは車を出すと、この三日間のことをカリスに話し始めた。


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