Camille Laboratory Top機動新世紀ガンダムX>創作小説

ガロードに
のくちづけを


Mysterious Moon
第九話 「巷に雨の降るごとく」より




 その晩、ガロードはフリーデンの甲板で眠り込んでいた。先のザコット一味との戦闘で、ガロードの自室のあたりの空調か何かが壊れたらしく、部屋中に艦内の廃熱がたち込めてしまっているのだ。ドアを開けたとたん、むわぁぁっとした空気が流れ出てきたのに辟易したガロードは、とてもではないが自室で寝られないと思って、風の吹き抜ける甲板の方がまだましだとばかりに、サウナまがいの自室から枕と毛布だけ救出して飛び出してきたのである。
 天空には綺麗なレモンのような月が浮かび、ガロードの寝顔を照らしていた。そして、ガロードの夢の中にまで入り込み、夢の中のティファをも明るく包んでいた。彼女はふっと微笑みを浮かべると、ガロードの顔を覗き込むようにした。

『どうしたのさ、ティファ。急にそんなに顔近付けて……』
『秘密、です。』

 あぁっこれはっっもしかしてぇ〜っ!とガロードが内心必死に慌てると、急に空が掻き曇り、風は荒れ狂い、月はその明るい姿を消し、ティファは黒い巨大な影となってガロードを押しつぶした。

「うわぁぁぁぁっ!」

 荒い息をしながらガロードが飛び起きると、甲板に上がってきた時と然程風景が変わっていた訳ではなかった。月は相変わらず天空にある。確かに、風は相変わらず吹いているし、雲の影も見えなくはないので、月が一瞬雲に隠れでもしたのだろう。それがあんな夢になったのだ、とガロードはぼんやりと考えた。

『しかし心臓に悪い夢だったなぁ。ティファが出てきてくれたのは嬉しいけど、ありゃないぜ』

 と、ガロードは盛大にため息をついた。折角風の吹く甲板に出てきたのに、背中が冷たい汗でじとじとしてしまっている。タオルでも取ってこようと、ガロードは艦内に降りた。


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