Camille Laboratory Top機動新世紀ガンダムX>創作小説>南の島の休日

「ティファは、随分と元気になったんだな」
 少女と入れ違うように、ジャミルが医務室に顔を見せた。
「おや、もうそんな時間か?」
 テクスは時計をちらりと見て、コーヒー沸かしに手を掛けた。
「海が気に入ったと言っていた。潮風が体に合ったのだろう。良いことだ」
「心理的な面でも、強くなったな」
 テクスが手渡したカップを受け取って、ジャミルはコーヒーに口をつけた。
「健全なる精神は健全なる肉体に宿るとも言うさ」
「古い言い回しだ」
「言い古された言葉ほど、真理をついているものさ。『近頃の若い者は』なんていうのは、古代バビロニアの碑文にまで遡れるんだぞ」
「ドクターには敵わないな」
 ジャミルは、珍しく笑みを見せた。変わったのはティファだけではないと、テクスは思っていた。

「休暇はどうするんだ、お前も上陸した方が良いと思うが」
「わたしが艦を降りる訳にはいかないだろう」
「お前もクルーの一員であることには変わりないよ。少しでも、陸の上を歩いてきた方がいい」
「そういうものかな」
 どこか頑ななジャミルに、テクスは静かに言った。
「医師の言う事は、聞いておくんだな」
「考えておくよ。ご馳走様」
 コーヒーカップを置いて、ジャミルは席を立った。

 セインズアイランドまで、あとわずか。
 それぞれの南の島の休日の夢を見守りながら、艦は夜の海を進んでいった。

(0208.08)



あとがき

 キャンディーズ(懐かしすぎる言い方だ……ラン・スー・ロイ)だけのはずだったんですが、勢いでティファに医者艦長まで出てきてしまいました。肝心のセインズアイランドは本編参照ってことで。
 何つーか、ロアビィって軽そうに見えてクール、というのが良いよなぁと思うんですね(でも案外熱血入ってるんだが)。で、ウィッツは「俺は俺」みたいな顔しつつ結構流されやすいというか、付き合いが良い兄ちゃんだと。この二人に出会えたことも、ガロードにとっては良かったんだよなーと。本編でも丁度このあたりはまだまだ平和で、娯楽室とか食堂でのほのぼの話があったりして雰囲気良いですよね。これも確かに、GXの好きな部分の一つです。このあたりを丁寧に描いていたからこそ、終盤のダッシュを支えられているんだよなぁと。やっぱ大好きです。


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