Camille Laboratory Top機動新世紀ガンダムX>創作小説

夜来香



Ie Rai Shan
Jamil & Lutil & Kina in UW7




 第七次宇宙戦争が開戦して、半年余りが過ぎた夏。北米連邦軍第三十一軍事研究室では、年端もいかない少年達が、いつか赴く戦場で生き延びるために、日夜訓練に明け暮れていた。その夜は訓練はなく、少年達は休息を取っていたのだが、それでも暗がりで動く影があった。

「なぁ、大丈夫なのかよ」
 そう不安を声に出した少年に、勝気そうな返事が返ってくる。
「心配ないって、ちょっとくらいどうってことないさ。嫌なら帰っていいんだぜ」
「嫌って訳じゃ……だって、ほんとに出るのかよ?」
「噂じゃあ、な。だから確かめに行くんだろ?」
「そうだけどさ、」
「なら、大人しくついてこいよ」
 そう言って、前に立った影が動き出した。後ろから、もう一つの影がついていく。


「だけど、何度来ても不気味だよな、夜の森って」
 研究室の周囲の森は、訓練でも使われていた。地形は覚えているはずでも、この暗がりと静けさに、背筋がどこか寒くなる。
「確かにゾクっとするけどさ……却ってワクワクしてくるぜ俺は」
「ほんと、恐いもの知らずだなぁジャミルは」
「キナが恐がりすぎなんだよ」
 後ろの少年を軽く小突いて、ジャミルはまた茂みを分け入っていった。
「恐くなんてないさ。だからこうして来てるんだろ」
 小走りに追いついて、キナが言った。
「じゃあ何尻込みしてんだよ」
「抜け出してるのが軍曹にバレたら……」
「どうってことないって言っただろ。大丈夫、今夜は絶対にバレないって」
 明るいジャミルの声に、キナはほっとしたような、それでもどこか呆れたような息を漏らした。
「その根拠のなさそうな自信はどこから来るんだよ」
「俺のカンさ。外れたこと、ないだろ?」
 得意満面に片目を瞑って見せるジャミルに、キナは微笑で応えた。
「そうだったね」
 二人は、暗い森の奥へと進んでいった。


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