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GXのルーツを探せ

 GXのファーストガンダムへのオマージュとしての面はよく知られているところですし、高松信司監督と川崎ヒロユキ脚本ってことで勇者風味というのもこれまた散見するところ。んが、もう一つのルーツがあったんだなぁ、とようやく気付いたのが、高橋・神田系の流れでした。詳しい方には何を今更だとは思いますが。


【1】「装甲騎兵ボトムズ」の場合(1983)

 ハードボイルドを絵に描いたようなキリコと、運命の女フィアナとが織り成すファンタジーSF(と敢えて言い切る)。#1が「終戦」ってことで、「戦後」の物語という点でもGXと通じなくもないのかも。
 因みに高松さんのサンライズでの初仕事は、この高橋監督のボトムズの制作進行(#44・49)。その後神田監督のバイファム、高橋監督のガリアンと1スタでの仕事を経て、84年末〜85年初に2スタの富野監督のΖガンダムの設定制作へ移られています。1スタでの最初の1年余での高橋・神田監督の影響があるのかと言えば、「どちらも基本に忠実な作り」ってことなんだろうなぁと思います。

●生存能力はやたらと高い主人公
 キリコのアレは反則級ですが、ガロードも相当サバイバルに長けてますよね。

●特殊能力を持つおかげで追い回されるヒロイン
 パーフェクト・ソルジャーのフィアナと、ニュータイプと言われるティファ。本人の自覚については正反対とも言えますが。

●彼女に惚れ込んだばかりに旅をすることになる主人公
 キリコもガロードもこの意味では初恋ドキドキ物語。実は18歳のキリコと15歳のガロードって3歳しか違わなかったりするのが何ともはや。

●荒んだ世の中で、温かい心意気を持った仲間達
 ゴウト達にせよフリーデンクルーにせよ、ほんまえぇ人達や。

●特殊能力を持つことを誇りとして生きる好敵手
 PS(と同等の存在)であるキリコに敗れることで、PSの誇りを保ったまま死んだイプシロンと、普通の人間であるガロードに敗れることで、人工ニュータイプとしての自らの過ちを自分に納得させるように死のうとしたカリスとではラストが正反対なんですが。フィアナやティファといった「自分と同じ(だと思った)女の子」が間に入るのもなー。

●主人公を付け狙う謎の組織の謎の双子
 アロンとグランのシュミッテル兄弟と、シャギアとオルバのフロスト兄弟。役所は全然違いますが、こうやって抜き出すと要素としては似てるのが不思議。

●戦後の荒れ果てた世界で逞しく生きる再生武器商人
 惑星サンサのゾフィー達もバルチャーもやってることは似たようなもんですな。
 バルチャーはどちらかというとあの陸上戦艦のおかげか、「戦闘メカ ザブングル」との類似性がまず言われますが。

●家族の仇を討とうとする執念の大人
 ゾフィーもカトックも配偶者と子供を殺されている、その憎むべき相手を目の前にした時……

●でもだからって恨まれても彼が実際に手を下した相手じゃないんだけどさ
 キリコは確かに元レッドショルダーだが、ゾフィーの家族を奪った戦いには参戦していない。ジャミルは確かにカトックの家族の居たコロニーにサテライトキャノンを放ったが、それ以前に既にカトックの家族の命は奪われていた。それでも、許せるものではなく。

●謎の自動防衛システムの存在
 クエントの遺跡もD.O.M.EのビットMSも、知らない人間にとっては全くの謎。

●休戦してたはずの二大勢力が一同に会してさぁ大変
 クエント軌道上に展開するギルガメスとバララントは休戦中にも関わらず一触即発からワイズマンに対し共同戦線を張る、しかし一年後には再び戦争に。月付近に展開した新連邦軍と宇宙革命軍は15年の休戦から戦闘状態に入り、一時停戦を経て、フロスト兄弟のサテライトランチャーで両軍壊滅、その後和平への道を探る。
 という流れから見るとそれぞれなんですが、急に艦船が集まって賑やかだなーってのは似たようなものかと。

●巨大な人工物の空間から降ってくる声が語る世界の真実
 いやだってもう原形質保存装置が降りてきてワイズマンが喋るのと、D.O.M.Eが喋るのって……まぁどちらもデウス・エクス・マキーナ(機械仕掛けの神)には違いないんでしょうけど、展開としては後継者を得ようとしたワイズマンと、「古い時代はこれで終わりだ」のD.O.M.Eとは真逆か。
 デウス・エクス・マキーナという観点では、同じ高松監督の「勇者特急マイトガイン」との関連の方が有名ではあるのですが。

●とにかく予告がひたすら格好良い
 高橋監督の文と銀河万丈さんの声に勝てる格好良さはないと思うんですが、光岡湧太郎さんの声も捨て難く。GXの場合、あの次回予告兼EDの作りが良いというのもありますけどね。


【2】「機甲猟兵メロウリンク」の場合(1988)

 ボトムズの外伝として描かれた、メロウリンクの孤独な復讐劇。機甲猟兵へ改編された挙句に討ち死にした仲間達。それが陰謀であったと知ったメロウは復讐の旅に出る。

 ATライフルと手持ちの武器だけでATを倒していくメロウというのは、GX第一話で、体一つでMSハントをするガロードに通ずるものがあるような。高松さんは全12話中3話のストーリーボード・演出を担当。以下その回に関してつらつらと。

●Stage04「リーニングタワー」
 冒頭、舞台となるリーニングタワー全景。大地に斜めに突き刺さった戦艦って……戦艦ってぇぇぇ(^^;
 お話自体は、その斜めになった戦艦の中で姿なき追跡者との死闘を演じるメロウ一人しか出てこない映像がずーっと続き、やがて胡散臭いキークと、追跡者ゴルフィも姿を見せるんですが結局この3人しか出てこないというOVAならではの作り。もうハラハラしっ放しで、「きゃーもうやめてーっ」とかって騒いだものの、終わったら「あー面白かった!」と言えた快作です。

●Stage07「レイルウェイ」
 メロウの乗った列車を襲撃するカスタムATの群れ。えぇそりゃぁもう色んなデコレーションを好き勝手に施した派手な奴が、土煙上げてローラーダッシュで追いかけてきますよ、はい。
 ってんで、GX初盤のMS乗りの皆さんを思い出す光景でした。そういえばレオパルドが最初にダッシュしたときも「ローラーダッシュだ〜」とか言ってましたが、元々のボトムズでのATのローラーダッシュってのは割と短い距離を直線移動するためのもので、あんなにだーっと走り続けられるもんじゃないはずだったんですが、えぇそこはカスタム機ですからとか、それこそガンダムですからってことで。でも第六話とかでエニルのワイズワラビーとかも延々ダッシュで逃げてたなー。GXとジャミルのドートレスまでダッシュで逃げてた時には「黙って走れ!」というジャミルの台詞に「はぁ?」って感じでしたが。がっしょんがっしょん二本の脚で走ってたらその台詞に説得力あるんだけどなー。
 あとこの鉄道の雰囲気も、高橋・神田監督の「太陽の牙ダグラム」とかと通じるような、少し懐かしい大陸横断鉄道って感じのもの。GX最終話のアレですな。

●Stage10「キャッスル」
 敵でありながら、互いの技量を認め合い、決着を付けるべくボイル少佐を待つメロウ。「城をくれ」と、かなりとんでもないことを城のお嬢であるルルシーに申し入れ、あちこちにトラップを仕掛けてゆく。やがてボイルのATを追い詰めたメロウだったが、瀕死のボイルはメロウに真の敵について示唆し、メロウはボイルの協力を得て敵地に向かう。そしてボイルは、メロウの盾となるかのように凶弾に倒れるのであった。
 ――って、カトックさんの原型ですかこれはって感じで(^^; いやボイル少佐ってば中々に渋くってまさに武人って感じで、カトックとは違った良さがあるんですが。


 高橋・神田系とか言いながら2作品(しかもどっちもアストラギウス銀河の話やん)ですけど、ちょっとたまたま続けて見てただけでして。ガンダムシリーズの他の作品や、他の富野作品、また高松作品(勇者シリーズ・谷田部監督だけどダ・ガーンとか)と比較されるのは当然至極ではあるんですけど、案外こんなのもありましたよーってことで。高橋・神田監督の「太陽の牙ダグラム」は高松さんがサンライズに入る前のものですが、ダグラムとGXは、子供を子供扱いしない、大人の責任を果たそうとする大人が描かれているのが共通しているかなぁ、と思います。ダグラムの予告も格好良いしな(^^)

 ただまここに挙げたことの殆どは定石と片付けられそうな気もしますが、メロウのStage04のアレはまんまだと言い切ります。つかもう見た瞬間大笑いでしたよ(^^; ということで、機会があれば是非是非。


(0308.14/0508.17)


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