Camille Laboratory Topガンダム・ザ・ライド>創作小説>駆け抜けた宇宙

「貴方にも、式には列席していただきたかったものですが……」
「ま、こうして今日お祝いを述べられただけでよしとしましょう。」
 アダムは時計に目をやると、席を立った。
「名残惜しいものではありますが、今日の所はこれで。」
 ジャックも席を立った。
「そうだな……また是非連絡をください。今度こそ、うちへお招きしたい。妻も貴方にはお会いしたいと言っていますから」
「ありがとうございます、ジャック。また、いずれ。どうぞお幸せに」
「アダムも――アダム、貴方は――幸せですか?」
 その真摯な眼差しを逸らすかのように、アダムは自分の視線を泳がせた。
「さぁ……。おかげさまで五体満足、今も現役で居られるのですから、幸せなんでしょうな。」
「そうですね……わたしはあれからずっと後方ですから。でも、あなたと一緒に駆け抜けた宇宙が、文字どおり僕の青春でした。」
 ジャックの瞳は、あの頃の輝きを思い出させるものだった。アダムは、やや目を伏せると、顔を上げて手を差し出した。
「ジャック……」
 二人は、握手をしたまましばらく立ちすくんだ。そして、アダムの方から手を離すと、軽く敬礼をしてその場を去った。ジャックはアダムの姿が見えなくなるまで、敬礼したままそこに立っていた。

 そしてジャックは、オフィスに戻って今一人懐かしい名前を目にした。ヘンケン・ベッケナー中佐、元スルガ艦長である。彼の名は、しかし、今となっては要注意人物としてマークされていた。頃は宇宙世紀0084、連邦軍は二極化して対立の度合いを深めつつあった。ジャックは、その日、久しぶりに宇宙の夢を見た。

(0012.12)



あとがき

 何だかもうこの小説一本がわたしのRIDEの感想文そのものかも知れません。とにかく、たった5分間の映像作品であるRIDEにあって、ジャック少尉とアダム曹長は時々カットインしてくるものの、ジャック少尉なんてひたすら「うわぁぁぁ〜っ!」と叫んでるだけなんですよ(^^; なのに、この二人が画面の外でどんな人物だったのか気になって仕方ないほど、RIDEはよく出来ていたんです。RIDEに3回乗った後昼食を済ませ、「戦慄迷宮」に並んでいた間に、どんどん二人の設定が出来ていきました。少尉は繰り上げ卒業なんだとか、曹長はスゴ腕で一度は降格食らってるんだとか。その内にやたらと乙女な妄想が進んでしまった時には、居合わせた男性陣には申し訳なかったのですが(^^;

 この頃には「少尉の日記」ということで、少尉はあぁいうお坊ちゃんだから、『僕は良い部下を持てて幸せだ』とかってぽよーんなんだけど、曹長以下はきっと『あーもうあのお坊ちゃんは面倒見切れないぜ!』みたいに思ってるんだ、戦闘報告書にしたって、最初少尉が書いたのはミーハー極まりなくってとても報告書の体裁を取っていやしないから、曹長が赤ペン入れまくってようやく提出できたんだとか、軽めの話を考えていたんですね。その後妄想がバスの中から新幹線まで続き、あることないことメモ書きしてたんです。そのメモを改めてテキストにしていたら……小説一本出来てしまいました。

 一応ラポートDX「一年戦争サーガ」とRIDEの公式パンフを見ながら連ねてまいりましたが、台詞については本編中のものとは異なるようにしてみました。どうしてもそのままになってしまったものもありますが、さすがに全部正しくは覚えてませんし。うーんでもあそこの少尉の台詞はやっぱこうだよな、とかいうのもありますけどね(^^) キョウイチの落書きは実際に通路にありますが、ジャックの書き足しはあくまでも創作です。あ! そもそもキョウイチだのハロルドだのというひとも居ません〜。ジャック機は「01」、アダム機が「03」で、「02」はどこに行ったんだ?という話をしていたのですが、そこで「02」のひとはもう居ないということにしたんですね。4号ランチを曳航しているジムは「ハロウィン隊」のものらしいのですが、、これがジャック・ザ・ハロウィン隊の「02」かどうかは不明です。一応このお話では「02」がハロルド機、キョウイチ機が「04」ということになります。「ハロウィン隊」ってのも実はよく分からず、結果的にフジQの設定とは異なってしまう格好になりました。そのあたりは、おハナシの都合ということでご了承ください。フジQの設定でも「02」は行方不明みたいな風になってるんですが、これって「GUNDAM MANIA」の出口付近のショーケースにちょろっと書いてるだけでパンフには載ってないんですよ〜。次に行ったらちゃんとメモ取ってきてやる〜。ぐるる。

 あぁでも何だか作った設定全部入れられなかったかも〜。ジャックの父は後方の高級幕僚だというのはかろうじて入りましたが、ジャックの乗馬とチェスの腕もなかなかのものだとか、アダムが降格されたのは、彼の過失というよりは部下を庇ってのことだったからだとか。叫んでばかりのジャック少尉とはいえ、実はこの人もかなり腕が立つひとで、だからこそランチ曳航したまま、なんとかブランリヴァルにたどり着けたんだとか。いやアダム曹長が4機?撃墜してるんでどうもジャック少尉がお荷物に見えちゃうんですが、彼だって実は凄かったんですね(^^) 「ギレンの野望」での活躍も期待期待でございます〜。

 ……その後活躍の場が広がったのは嬉しいものですが、グリーンダイバーズにせよエコール・デュ・シェルにせよ、ジャック・ベアード中尉は現役なのにアダムはどこー(i_i) やっぱアダムとジャックのかぼちゃ隊でなくてはと思うのでありまするよ。←隊長はどっちだ(^^;

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