Camille Laboratory : ZEGAPAIN Topゼーガペイン>創作小説>pieces of puzzle 難問の断片

【おまけ】

 データ解析は順調に進み、シマ司令と思われるパーツも次々と発見された。まずシマのパーツを探してそれを分離確保し、その後データの解析を行うとは、ミナトが指示したことではない。だが自然と、解析チームはそういうことをするようになっていた。それはミナトのためでもあるし、何より、シマが復活してくれたら、データ解析のスピードは格段に上がることが目に見えているからだ。そして、ついにシマの人格データの一部が発見された。

 報告を受けて、舞浜南高校の生徒会室に小走りにやってきたミナトは、テーブルの上の猫を見て目をぱちくりさせた。
「状況を報告するにゃ」
 猫は、確かにそう言ったのである。忘れもしない、シマのあの声で。

「にゃ、って……」
 シマのデータが見つかったという報告を聞いて、シマその人が現れると思い込んでしまったのは、確かにミナトの早とちりだ。でも、だからといってこの状況は何事なのか。リョーコは苦笑いを浮かべて、ミナトに続きの報告をした。

「見つかったのはまだ一部ですもん、足りない部分は猫のままなんです。可愛くって良いですよね」
「猫の手を借りたいとは言うけれど、本当に借りることになるとはね」
 クロシオが苦笑するのも無理はない。イリエも付き合いよく微笑を浮かべた。
「使えるものは何でも使う、シマ司令らしいじゃない」
「だからって猫だなんてありえねー! って、キョウちゃんなら言いそうですよね。私は好きだけどな、ネコ司令」
 リョーコがそう言うのに、一同はそれぞれに頷く。いや、キョウでなくてもこの光景にはそう言いたくもなる。

「でもほんと、中身がシマ司令だと思うと、何かそう見えてくるから不思議」
「猫なのに妙に風格があるものな」
 メイウーとルーシェンが口々に言うのに、猫はふと背を伸ばして、耳を立てた。その様子が、まるで眼鏡を直すシマを思い出させて、ミナトはいとおしげに猫を抱き上げた。
「おかえりなさい、司令」
 ミナトの亜麻色の髪がふわりと猫の顔を隠す。その陰で、ミナトはそっと唇で猫に触れた。

 校内のベンチではシズノが本を読んでいた。その足元に、いつもの猫がやってきた。
「あら、またあなたなの。いらっしゃい」
 シズノはいつも通り、そう優しい声を掛ける。だが猫の方は、様子が違っていた。
「イェル、僕にゃ。シマにゃ。分からにゃいのか?」
 そんな言葉を話す猫に、シズノは目を丸くして、鈴のような声で笑った。
「あらあらこの子ったら、お喋りするなんて不思議な猫ね、シマにゃんこちゃん。よしよし〜」
 シズノが無邪気に猫を膝に抱き上げて撫でるのに、猫は嬉しそうに喉を鳴らした。
 ──って、猫の本能が勝ったか!
 猫の体はシズノに完全に屈服している。彼は困惑の中で、歓喜に身を任せるしかない自分をどこか冷静に見つめていた。

「やはり私のことは分からにゃかったようだにゃ」
 シマの声でそう落ち込むのを隠さない猫に、ミナトは柔らかい声で答えた。
「無理もないかと思います。見た目は、猫ですから」
 こうしてパーツが見つかっていけば、いずれシマも元通りになるはず。そうしたら、シズノの記憶も元通りに戻るのではないか。二人の戦いの日々は、そうして報われてもいいはずだ。ミナトがそう思っていると、リョーコがこう言った。

「キョウちゃんにシマ司令のこと話したら、三分間は笑い転げてました。でも次の三分間、泣いてたんですよ。ま、三分ってのは大げさですけど」
 そう聞いて、猫はにゃぉん、と高い声で鳴いた。彼もまた泣いているのか。ミナトには、そう思えてならなかった。


(0612.29)




あとがき

 ファンによる二次創作ということで大目に見てやってくださいという、本編後日談。他の話もそうですが、過去については完全に創作の範囲です。
 データが断片化されているというのは、グレッグ・イーガン「順列都市」の影響かも。データ解析要員のメイヴェルはXOR準拠。アニメのは別バージョンとしか思えないデス(^^;
 シマにゃんこはありがたくも好評で嬉しいのですが、これは書いて良いのかどうか迷いました。遊佐未森「ONE」を聴いてて、これは#26のミナトのテーマだなと思ってしまって。「生者必滅、会者定離」と言われてて、帰って来ない人もやはり居るわけで、シマを復活させてしまったらある意味ちゃぶ台返しじゃないの、と。
 でもシズノがあんな形でラストを迎えているのなら、猫だって良いじゃないとは思ってしまうんですよねぇ。#13のリョーコの猫型AI妄想でのシマ司令の「オケアノス全速発進にゃー!」が可愛かったし。坪井智浩さんが「にゃんにゃーん♪」と歌ってるから良いのにゃ! ←それはDXフォンブレイバー01

 その一方で問題の三人の話も一つの「難問の断片」ということで。このあたりの話は後々も視点を変えつつ書き続けているので、それだけの難問だということでしょう。

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