Camille Laboratory Top機動戦士Ζガンダム>創作小説

遅れてきた
誕生日



Another Birthday
Camille in UC0102




「あれ? 主任さん居ないの?」
 静かな研究室には不釣合いのその明るい声に、制服姿の社員がキーボードを叩く手を止めて席を立った。
「こんにちは、ヒカワさん。主任は只今席を外しておりますが、何か御用でしょうか。」
 訪問者の身分証を示した氷川奈々は『どもっ』と片手で答えると、そのまま思案顔で頬をつついた。
「ちゃんと出社はしてたかぁ。何処行ってるか分かるかしら?」
「医療部へ健康診断に行っておりますが」
「健康診断? ってここじゃシーズンオフじゃない?」
 そう言って訝るナナに、社員も半ば苦笑いを浮かべて答える。
「えぇ、そうなんですけど。……よくご存知ですね」
「医療部に連れが居るからね。」
 ナナは荷物を抱えなおすと、四角い包みを差し出した。
「どうもありがとう。あ、これ研究室宛てのお土産ね」
「いえこちらこそ。どうもありがとうございます」
 その言葉も終わらないうちに、ナナの姿は見えなくなった。

「えーっと何々? 本日のケーキセットはザッハトルテ。……ここだな」
 社員食堂に併設されている喫茶部のメニューを検分して、お茶とお菓子をトレイに乗せて席を探す。カフェテリア形式の喫茶部は、昼下がりのお茶の時間ということもあって、そこそこ賑わっているようだ。ナナはぐるりと首をめぐらせると、お目当てのテーブルを見つけてそちらへ向かう。

「探したわよー、主任さん。」
 空いたテーブルにトレイを置くと、そこでやっと席に居た二人が顔を上げた。白衣のドクターと、その向かい側に掛けた二人組は、男同士でザッハトルテをぱくついていたらしい。『主任さん』と呼ばれた側は、黙ってドクターを軽く睨んだ。
「……。」
「何でお前がここに居るんだ?」
 ナナはそう声を出したドクターの隣に陣取って、一口お茶をすするとやっと返事を返した。


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