Camille Laboratory Top機動戦士Ζガンダム>創作小説

Silent Bells



"Silent Bells" by 遊佐未森+古賀森男(Fabienne)
first release on 8911.22 ESB-3042
now in "mimomemo" by 遊佐未森 ESCB-1855
KARAOKE : X-2000(78-09)
       ★
Camille & Fa in Dec. UC0090




 カラン、といささか古めかしい鐘の音が夕方の街に響いていた。夕暮れの光の演出効果というものが然程ない月面都市では、音が告げる時刻の方が心に染み入るものらしい。ふとこの街の高い天窓を見遣ったカミーユは、そんな事を考えながら、人待ち顔で古い石造りの門の脇に立っていた。

 カミーユがこのフォン・ブラウン市に来てから二度目の冬が巡ってきていた。人類初の月面都市として歴史を重ねてきたこの街で、今の彼はフォン・ブラウン市立大学に通う一人の学生として暮らしていた。彼が待っているのは、グリーン・ノア以来連れ添った格好のファ・ユイリィ。彼女はというと、地球に居た時に世話になった病院の医師の紹介で、この街では随一の歴史を誇る聖ジュリヤン医科大学の付属看護学校に通っていた。先刻からカミーユが立っているのがその校門で、鐘の音はキャンパス内の教会のものだ。今日から学校はクリスマス休暇なので、看護学校の寮生は外泊許可が出ている。それで、カミーユはファを迎えに来ているのだった。なのに彼女はなかなか姿を見せず、そのかわりに下校していく看護学校の女生徒がやたらと彼を気にしているのが見て取れる。別に人待ち顔をして立っているのはカミーユだけではないのだが、彼はどうやら目立つらしい。軽く舌打ちをして前髪を払うと、また女生徒と視線がぶつかりそうになって、目のやり場に困って溜め息をつくという有様だ。

「お待たせ! ごめんなさい、遅くなって」

 そんな彼の胸中を知ってか知らずにか、ようやくやってきたファが明るく声を掛けた。カミーユは軽く息をつくと、彼女が下げていた鞄を持ってやって、校門の中へと足早に入っていった。ファはきょとんとして、あわてて彼を追いかけた。


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