Camille Laboratory Top機動戦士Ζガンダム>創作小説

同級生


A crassmate
Camille in U.C.0084




「どうぞルイス先生、こちらです」

 校長に案内されたそこは、懐かしくも多少の違和感を覚える場所だった。十年前、僕ことルイス・バーマンがこのミドルスクールの生徒だった時に図書委員を務めていた図書室。年月が蔵書の数を増やし、あちこちくたびれかけた印象を与えているが、紙とインクと埃の匂いは、あの頃から変わらない。背の高い窓から差す光が、背の高い書架に淡い陰影を与えている光景も、あの頃と同じだ。多少僕の背が伸びたにしても、この高い天井にはさすがに届かないままだ。入り口の脇には雑誌の棚、その向かいには貸し出しカウンターがあって、その奥の扉は司書室という造りもそのままだ。言葉もなく周りを見渡している僕に、校長は微笑みを浮かべて声を掛けた。

「お懐かしいのでしょう? ルイス先生のいらした頃からは変わってしまっているのでしょうけれども」
「えぇ。何しろ私達が生徒だった頃なんて、棚の半分も本がありませんでしたからね。でも、この『あすなろ文庫』はあの時の雰囲気そのままですね」
 言って、僕は一層古びた本が並んでいる書架の前に立った。
「ルイス先生がそうおっしゃるのならそうなのでしょうね。司書室はお分かりですね?」
「はい。」
「では私はこれで。――どうぞごゆっくり。」
 退室する校長に会釈を返して、僕は書架に向き直った。

 あれから十年経って、僕はこの場所に戻ってきた。十年経っても相変わらずの本の虫で、司書としてこのミドルスクールに赴任したのである。僕は校長が立ち去ったのを確認して、携えていた鞄から一冊の本を取り出すと、書架の位置を確認した。元々この本は、この『あすなろ文庫』の本なのだ。僕はその本を書架に戻す前に、そっと表紙を撫でてみた。古びてはいるが、知っているものでなくては分からないほど丁寧に補修された跡がある。その本の題名は、『飛行の歴史』と読めた。


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