Camille Laboratory Top機動戦士Ζガンダム>創作小説

い祝福



Fa's Birthday in UC0087




 その日、ファは珍しいものを見た。

 通路の影で、レコアに何か頼みごとでもしているのか、カミーユが頭を下げているのである。深刻な話題でないことは、レコアの表情を見れば分かる。
「しょうがないわね、」
 そう言って苦笑するレコアに、カミーユは微かに頬を赤らめて改めて頭を下げた。
「すみません、レコアさん」
 そして手にもっていた袋をレコアに手渡そうと顔を上げて、その目を丸くした。
「……ファ。」
 気の抜けたその声に、レコアは片手でその袋をカミーユに押し返すと、くすくす笑って振り向いて、ファに声を掛けた。
「ファ、カミーユがあなたに渡したいものがあるそうよ」
「え?」
 そう答えて二人の方へ近づくと、レコアはリフトグリップに手を掛けて行ってしまった。

「何なの? 渡したいものって」
 そう訊くと、カミーユは顔を半分背けるようにして、袋を突き出した。
「ほら、これ。」
「ありがとう。でも、何よ?」
 受け取りつつそう訊くと、カミーユはぶすっとした表情のままで答えた。
「いいから、開けてみればいいだろう」
 飾り気のない小さな紙袋は、ポケットにでも入れていたのか、どこかくしゃくしゃになっている。袋の口を留めてあるシールをはがそうとしたところで、通路に別の人影が現れた。
「カミーユ、アストナージ曹長が呼んでたぞ」
「はい、今行きます。じゃね、」
「あっ、カミーユ……」
 これ幸いと逃げるように彼は姿を消して、ファは袋を持ったまま溜息をついた。


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