Camille Laboratory Top機動戦士Ζガンダム>創作小説>赤い祝福

「でも何だか、あんな風にレコアさんに頭下げてるカミーユって、珍しくて」
 ファが素直にそう言うと、レコアの顔に微笑が戻った。
「そう? これでもあの子がアーガマに来た時から面倒見てたのよ。今でこそ大きな顔してるけど、最初の頃はあぁじゃなかったわよ」
「そうだったんですか?」
 それは、ファの知らない時期のカミーユだった。
「無理もないわよね、まるで知らない所に飛び込んできて、立て続けに──色々な事が振りかぶってきて。大人びた振る舞いを見せたかと思うと、子供の顔を丸出しにして。あ、やっぱりこの子、子供だったんだ……ってちょっと安心したり、次の日にはけろっとしていて、逆に心配になったり。よく分からないわね、あの子」
 レコアは、そこで言葉を切った。
 両親を立て続けに失って、少年は酷く傷ついていた。それが戦場で起こったことにしても、自分の親が目の前で殺されて、平然としていろという方がよほど酷だった。細い体の少年の、濡れた瞳がレコアには気掛かりだった。でも、心配している余裕がレコアにはなかった。ジャブローへの潜入任務がすぐそこまで迫っていたからだ。カプセルに乗り込んで射出を待つ、そこへ少年がやってきた。瞳の色を深くして、レコアを見詰めていた。片腕のマーク2で、出撃していった。レコアを無事に射出するためだと、言った。そして、ジャブローでレコアを探し出してくれたのも、あの少年だった。
 でもあの子は──子供だった。


 話が途切れて、ファはエナメルリムーバーと手袋を手に席を立った。
「あ、じゃ、わたしこれで。──色々、ありがとうございました」
 ぺこりと頭を下げるファに、レコアは瞳にどこか悪戯っぽい光をたたえた。
「メイク落す前に、ちゃんと寄るところ、寄りなさいね」
「……はい。」
 頬に微かに朱を差して、ファはこくりと頷いた。


 ファの足は、カミーユの部屋に向いた。それまで、誰にも会わないことを祈りながら。一つ大人になった自分を、彼はどう見てくれるだろう。少女の胸は、知らず、高鳴っていた。


(0210.09)



あとがき

 「赤い祝福」、略して「赤福」ではなくて。ファの誕生日話です(^^) ΖのはずがルージュのおかげかGXっぽくなりましたが(笑) 念のため例の年表見てみたら#32「アクシズからの使者」と思われる記述がUC0087.10.12になっているので、じゃ#31「ハーフムーン・ラブ」の後ってことに。ってぇことは何かい? サラちゃんの相手をしながら、ファの誕生日プレゼントもしっかりげっとしとったんかい、かみ子さんはっていう話になってしまいましたが(^^; まぁ大目に見てやってください。

 マニキュア(ペディキュア)とアンクレットというのは、男の子が選ぶにしてはえらく物好きなアイテムって気もしますが〜大体その#31で、サラを気にしてたのを誤魔化すのに「こういう服、ファ、似合わないかってさ」などと口にできるよーなひとですから。咄嗟にこれが出るって凄いんじゃないかと思うんですけど。はぁ。でもファは脚綺麗だから、素足にペディキュアとかアンクレットとかって良いんじゃないかなーとか思うんですが。

 何と実はレコアさん初めて書いたんじゃないかと思います。#31という微妙な時期なんでちょっとブルー入ってますが……レコアさんとファって結構見てて好きだったんで、書けてよかったなと。レコアさんにメイクして貰ったファを見てカミーユが何と言うのかはご想像にお任せします(^_-)-☆


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