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First Contact



Camille & Torres in UC0087




 気がつけば、ただひとりの自分がそこに居た。

 カミーユはまだ夢の中に居るかのように、ゆっくりと重い目蓋を開けた。
 白いシーツ、白い壁。部屋にしても、部屋の主にしても、まだお互いに慣れていない。カミーユにしてみれば殺風景な部屋だし、部屋の方にしてみても、とっつきにくそうな人物に見えているのかも知れない。

 グリーン・ノア1を飛び出して、アーガマに飛び込んで、ティターンズから使者――エマ中尉――がやってきて、おふくろが……アレキサンドリアで会った父……脱走、そして――
「もう沢山だ!」
 叫んでみたくて叫んでみたものの、心のどこかの呟きは、『本当にそう思う?』と問い掛けていた。
「いや……」
 返す声は白い湖に吸い込まれてゆく。
 それは『思わない』ということなのか、『嫌だ』という反発なのか。
 とりあえず、その後は、しばらく記憶にない。

 白い部屋の片隅で気がついてみても、ひとりであることに変わりはなかった。
 顔も体も汗ばんでいるし、気分も変えたい。幸い、この部屋にはシャワーがあるようなので、すぐに飛び込む。
「こんな顔、見られたくもないよな……」
 鏡に映った自分の顔は、何も知らない子供の顔でしかなかった。ひとりで迷って泣き出した子供の顔。長い前髪は額に張りついて余計子供じみて見えるし、おまけに……目は泣き腫らして真っ赤だった。
 勢いよくコックをひねると、無数の水滴が水のヴェールのようにあたりに漂った。
「しまった……無重力っ」
 宇宙では感傷に浸っている余裕なんてないんだ。漂う水滴を見つめながら、そんな事を思った。


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