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機動戦士Ζガンダム
>創作小説
たしかな偶然
Sure accident
from ZZ #10 "So long, Fa"
静かだった。各種機器の低い作動音さえ、傷ついたメタスのコックピットを包む静寂を助長する効果音になってしまっていた。
既にサイド1の空域には入っている。コース予測を立てて、コロニーに接触出来るまでの時間を割り出させる。予備の酸素と生命維持装置の残作動時間を確認して、なんとか持ちそうだとほっとする。既に操縦系統はやられてしまい、慣性で流されているだけだから、救助信号を出してしまえば他にすることもない。
『ほっとしたとはいえ、安心するには早いのにね……』
我ながら落ちついていると思うのだ。一歩間違えばこのまま宇宙を漂流してしまうというのに。ひどく静かな時間にひとり、全天周モニターの映す宇宙にぽつんと浮かびながら、ファは今まで感じたこともない落ちつきの中に居た。
アーガマから救助が来ないのは分かっていた。使いものにならないモビルスーツ一機に構っていられるほどの余裕などないし、ラビアンローズが近いから接触をするのが先だ。ここでメタスを回収するリスクと、ラビアンローズに接触することで得られる利益とを考えれば、解答は自明だ。
回収も期待できず、コロニーに拾って貰える確証などはない。まして、シャングリラヘ行けるなんて奇跡のようなものだ。それを、期待するというのでなく、そうなるものだと思っている自分に笑う。
あの時もそうだったかな、と思い出す。命辛々グリーン・ノア1を脱出し、ブライトキャプテンのシャトル・テンプテーションで地球へ向かう途中、正体不明のモビルアーマーに襲われた時のこと。不安で仕方ないのに、どこかで安心をしていたのは、テンプテーションをカミーユが守ってくれていたからだとファは思っている。その前に、テンプテーションがアーガマに接触できたのだって、カミーユに会いたかったからなのかもしれない。カミーユのそばに居たいから、わたしはカミーユのそばに居る。きっと、そういうこと。
『なら、カミーユのところへ帰れるはずよね』
シャングリラの照り返しが強くなる。ファはそっと、目を閉じた。
(9511.20)
あとがき
ΖΖ#10「さよなら、ファ」から。これも
「Map without a way back」
同様、題名の元ネタは遊佐未森。短いの続いててすみません。95年というとガンダムW本放送の年ですが、本人はまだGガンの余韻に浸ってました(^^;
しかしこのΖΖ#10ってのは、ラストのBGMが「水の星へ愛をこめて」のインストということもあって、Ζの遅れてきたエピローグという印象が強いんですよねぇ。何かもう、ここへきて改めて泣かされたというか、いやそれより、アニメックでこの回を取り上げた記事読んだ時の方が泣かされたかも知れませんけど(Ζの最終回では泣けなかったんですが)。ファは元々好きだったんですけど、これでいよいよその想いが強くなったように思います。だからこそ今でも延々拘っているのだろうなぁ、とも。
あ、でもほんと今気付いたんですが、Ζの#10は「再会」で、上にも書いてるテンプテーション救出劇なんですよねぇ。この話数の偶然の一致というのも面白く。
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