Camille Laboratory Top機動戦士Ζガンダム>創作小説

涙の法則

Series : Teardrops
それを涙と書くのはね、海へと戻る約束のためだよ。


Reason of Tears




 ダブリンへのコロニー落としを巡る攻防に身も心も疲れ果てたアーガマとそのクルー達。彼らは地球でなすべきことを終え、宇宙へと帰還するために、彼らの地球上での支援組織であるカラバのノルウェイ基地をめざして航行していた。傷ついたその船体が物語るように、この戦いはあまりにも多くの犠牲を出しすぎてしまっていた。カラバの旗艦アウドムラはクルーが全滅、アウドムラ艦長でありカラバの実質的指導者の立場にあったハヤト・コバヤシまでもが、早すぎる死を古くからの戦友であるブライト・ノアに弔わせることになってしまった。コロニー落としの後、数多の嘆きが天から落ちてきたかのように黒い雨が降り注ぐ中、追撃に警戒の目を向けながらも、クルーは半舷休息を取っていた。

「……ったく、あの時の剣幕ったらなかっらよな!」

 休息を命じられて自室に戻ったトーレスだったが、気持ちがささくれ立つのかどうも寝付くことができないでいた。誰に話しているのでもないのに、いつに増して饒舌なその独り言は、酒が入っている時の彼の癖だ。多少ろれつは回っていないが、口は動くのを止めようとしなかった。

「反応がクリソツでさ、パターンが読めてるんらけどさぁ、こっちは。そのまんまらぜ、見てらんないって」

 コロニーが落ちる前のダブリンで、彼らはかつて同じくアーガマクルーであったカミーユ・ビダンとファ・ユイリィに奇跡的な再会を果たしていた。カミーユの顔を見てしまって、何故か思い出したのはあの「アーガマ某重大事件」のことだった。シャアのダカール演説の後、地球から帰還したシャアとカミーユを収容したアーガマがサイド2・13バンチに寄港していた際に、嗜好品の買い出しを命ぜられたトーレスとキースロンが中心となって酒盛りをした一件である。あまりにもどんちゃん騒ぎが過ぎて、そんな異名がついてしまったのだが、あんな騒ぎは後にも先にもあの一度きりだった。およそカミーユの普段のイメージを覆した――おっとそうじゃないよな、奴は至って普段どおりだった――あの晩の事が一番に思い出されるとはね。そう思うとつい、眠れないのも手伝って、「艦長の目を盗んで」隠しておいた忘れ薬に手が出てしまったのだ。意識が朦朧としてくる……宇宙に居るような……あいつが居た宇宙にいるような、そんな感じがする。


1/2 ◆nextTop機動戦士Ζガンダム