Camille Laboratory Top機動戦士Ζガンダム>創作小説

薤露青



Kairo-Blue
Camille & Fa in UC0091




 フォン・ブラウン市立美術館に向かう通りには、大小の画廊が軒を連ねている。そんな界隈だから、ちょっとしたティールームにもこじんまりとした展示スペースが設けられていて、ここそこの芸術家の卵達に作品公表の機会を与えているのだった。そんな新進の芸術家の作品が彩りを添える店の一角で、カミーユは人待ち顔でショコラオレンジなどに口を付けている。

「あら珍しい。」

 麻の風合いを持たせた軽やかなスカートが踊って、中二階にいる彼に声を掛けた。

「そっちこそ珍しいんじゃないか?」

 勝手に相席を決め込んだナナに毒づく。

「いいじゃない、どうせお互い待たされてるんだから」

 ナナはカミーユの向かいに陣取ると、傍らのメニューを繰った。

 氷川奈々。彼と同じくフォン・ブラウン市立大学の学生で、何かというとカミーユに絡んでくる――やっかいな存在である。大体、彼女のいるはずの文学部は、カミーユ達のいる理学部からかなり距離があるというのに、足しげく通ってくれるその様はご苦労様としか言い様がない。夏期休暇に入ってしばらく会っていなくて清々していたのに、何もこんな所で天敵に会いたくはなかった。お互い、という言い方がよけい癇に触る。そんな気分がどうしても皮肉めいた言葉を紡ぐ。

「今来たばかりじゃないか」
「でも待つことになるから同じよ。ハイビスカスティーお願い」
 早々にオーダーまで通してしまうナナに半ばあきれ半ば感心して、どうせならつき合うか、と彼は腹をくくった。


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