Camille Laboratory Top機動戦士Ζガンダム>創作小説

ほんの少しの自信が状況を好転させることもあれば、
ほんの少しの迷いが状況を逆転させることもある。
そう、取るに足らないほどの一瞬でも……
そしてそれが原因で
私のマーク2は砂浜へと落下した──


魔法使いと
王子様



The Magician and My Prince
from GUNDAM ZZ #34 "Camille's Voice"




「ル……プル」
 寒い──なんだかすごく……
「聞こえてるの? プル!」
 ジュドォ? 私なら大丈夫
「……プル?」
 だって言ったでしょ、だから、早く……
「気はたしかみたいだね、お嬢さん」
 行って……えーっ?

「な、なによお、私は正気よ!」
 変ね、ジュドーってこんなこと言うかしら?そう思いながらも、私はかちんときてどなった。ホント、変……変だわ、ここも。一体どこなの? 「君か、あるいは」
 私の疑間を先回りしたように、答えが返ってくる。
「君にとても近い人の内面だろうね。潜在意識か遠い記憶かの区別はつけられないけれど。見覚えあるんじゃない?」
 そう言われるとそうね……あたり一面まっ暗、そして凍りつくような寒さ――

「君が正気でこんなとんでもない所へ来たなんて考えられないな。ということはやっぱり僕が君を追いこんでしまったんだろうな。ごめん、あやまるよ」
「うぅん」
 私は確信を持って、答えた。
「私やっぱり自分で来たのよ、ある程度はね」
 少し、とまどって……
「どういうこと?」
「ん――だって、そっくりなのよ、黒い魔法使いの塔にね」
「魔法使いの塔?」
「さっき病院で読んでた本でね、お姫様が閉じ込められちゃうところなの。私あんな本読むの初めてだったから、すっかりお姫様になっちゃった気分が抜けてないんだわ、きっと」
「で、お姫様はどうなるの?」
「王子様が助けにきてくれるのを信じて待ってるの。私がお姫様なんだから、王子様はきっとジュドーね」
 白馬ならぬ、白いモビルスーツに乗った私の王子様……うふっ。
「じゃあ君は王子様を待つの?」
 イヤミじゃない。心底心配してる、って声だわ。
「そりゃ待つけどぉ。お話ではね、王子様は塔の外で一生懸命黒い魔法使いと戦ってるの、というのもね、塔をよく知ってる森の魔法使いと相談してね、王子様が黒い魔法使いの目を引いて、森の魔法使いがお姫様を助け出すことになったから、魔法使いを――」
 私はその時初めて気が付いた。彼はジュドーじゃないわ。だってお話じゃなくても王子様は今戦っているんだし、魔法使いはお姫様の所へ来ている……
「ねぇ魔法使いさん。あなたは一体誰?」
 すると彼はくすっと笑って言ったのだ。
「あててごらん、」
「あてて……って、そんなぁ。」


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