今日は何の日?
What day is it today?
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ピルルルル…
いつもと変わらないベルの音に反応して、ブライトはいつもと同じようにインターカムを取った。いつもと違うのは、何やら胸騒ぎがすることだ。とはいえ、戦闘だとか、そういったものではない。だからこそ余計に気になるのだが……
「私だ」
「ブライト艦長、おはようございます。ブリッジより定時報告です。0800時をもって昼間当直に移行いたしました。現在位置は……」
よどみないトーレスの声は殆ど彼の耳に入っていないようだ。ブライトはぽかんとしてモニターを眺めている。正確に言えば、薄暗い室内に灯るモニターに反射した自分の顔を……いや、頭を眺めていたのだ。まさかそんな……
「……とのことです。よろしいですか?」こんなことってあるものか? 先刻の胸騒ぎはこの事だったのか?
「ブライト艦長?」
不思議そうな表情のトーレスがモニターの中で首を傾げた。
「あぁ、了解した」何のことだかよく分からんが、この一件よりはマシだろう。「ブライトより以上」
ブライトはインターカムを置くと、フゥと大きく息をつき、頭にやろうとした手を止めた。
しばらくして艦長私室から出てきたブライトを待ち受けていたのは、憂い顔のエマリー・オンスであった。エゥーゴのドック艦ラビアン・口ーズの艦長代理である彼女にとっては、ブライトと……もとい、アーガマと共に居られる時間はそう残されていない。その事を思うとつい下を向きがちになってしまう……バカね。宇宙には上も下もありはしないのにね。
「エマリー?」
「あっ……おはようございます、ブライト艦長」
エマリーの顔がぱっと輝いた。こうしてみると、頑張っている二十歳の女の子なのだが……ブライトはつい、やましさに視線をそらせてしまった。が、
「!?」
驚愕を隠せないでいるブライトを視界一杯に入れて、エマリーは初め怪訝そうに、そして悲しげにうつむき──何故視線をそらしたの──そして努めて明るく、やっとのことで問い掛けた。ものの三秒の間、である。
「どうかなさったんですか? 艦長」
「え? あ、いや、その…何でもない」何でもないことはないぞ!絶対に今日はおかしい。「それより、朝からご苦労だな昨夜は眠れたのか?」
「えぇ」艦長にお会いしてから、カモミールも効きませんけど……「艦長こそ、顔色がすぐれないようですけど……本当によろしいのですか?」
心なしか、エマリーの瞳は揺れているようだ。この娘は──「私の事はいい。用件はブリッジで聞こう」そう言うとブライトはエマリーの肩を軽く叩く……のを思い止まってエレベーターに乗り込んだ。
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