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WATER



Camille's Birthday in UC0087




 そこは、白い地平だった。
 動くもの一つ見当たらず、ただ雪の花片が視界一面に舞っているだけの、白い地平。
 立ち尽くしたまま方向を見失ない、何処にいるのかもわからない。

 カミーユは、数日振りにアーガマ居住区の自室の前に立っていた。
 ──と言うより、ただ呆然と立ち尽くしていたと言う方が正しい。
 何日振りだろう? と考えてみる。一週間も経っていないはずだ。なのに、何だか随分前の事のように思える………。
 先刻から同じ事ばかりが頭の中を巡っていた。そんな事より、早く自室へ入ってしまえば良いものを、一体俺は、何をぼーっと突っ立っているんだ?

 何故だろう……? と、また同じ思考が巡り始めた時、誰かがこちらへ近付いてくる気配がした。そのおかげでカミーユは、ようやく自室へと一歩を踏み出す事が出来たのだった。

 部屋の中は出撃した時のままだった。レコア・ロンドが行方不明となったあの戦闘の後、アーガマはラビアン・ローズと接触し、カミーユ達パイロットは戦闘配置を解除された。カラバとの合同作戦に備えてであったが、カミーユは休養する気にはなれなかった。かと言って、MSデッキに行けばアストナージにどやされるものだから、仕方なく部屋を片付けようと思ったものの、中々うまく出来ずに放り出して、結局そのままうたたねをしていたのだった。そしたら、ハサン先生から呼び出しをくらって、それから、それから……
 カミーユは、止められない思考が巡るに任せながら、ベッドに腰掛けてぼんやりと足下を見詰めていた。そこには、つい先刻まで自分がいた地球が、その青い弧を漆黒の宇宙に輝かせている。

 時間と空間など、所詮、人間の作り出した観念に過ぎないようにさえ思えるな……あの地球を見ていると。何だか手が届きそうだ──
「?」
 妙な手応えを感じて、カミーユは二・三度瞬いてみた。確かに地球は『緑の星』とも呼ばれるが、果たしてこんなライトグリーンだったか……?

「オカエリ、カミーユ」

 地球が、跳ねた? それで初めてカミーユは笑った。


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