「てがみぃ? 何それ。」
サラが、グリーツがフォートセバーンへ行くのに、フリーデンクルーからカリスへの手紙を託すことを手短に説明すると、ガロードは頬をぺしぺしと叩いた。
「カリスに手紙かぁ……寝ぼけてなんてられないな。さんきゅ、サラ」
「礼ならキャプテン達に言うのね。じゃ、出来たらブリッジに持ってきてね」
「りょーかいっ!」
元気に応えたは良いものの、さて何をどう書いたらよいのやら、ガロードはサラから渡された白い便箋を目の前に悩むことになった。
ガロードがやっとのことで手紙を書き上げると、もう外は明るくなっていた。雨も上がり、朝になったようだ。どうも途中で居眠りをしてしまったらしい。あわてて窓から外を見ると、グリーツの艦はまだそこに居た。ダッシュでブリッジへ駆け込むと、シンゴが一人で『おはよう』と迎えてくれた。
「うっす……サラは?」
「休んでるよ。手紙、書けたのか?」
「あぁ……まぁ、何とか。」
「預かっとくよ。後はティファだけかなぁ。」
シンゴの言葉に、ガロードは目をぱちくりさせた。
「ティファもまだ書いてないの?」
「サラは話はしたっていってたんだけどな。……お前、朝食持っていってやるんだろ? ちょっと聞いてみてくれよ。グリーツさんもじきに出てしまうからさ。」
「分かったよ」
ガロードは、ブリッジを出て食堂へ向かった。
ティファの分の食事を用意して、彼女の部屋へ行く。毎日のことだけれど、ティファに会えるのは嬉しい。ガロードは彼女の部屋をノックした。
「おはよう、ティファ。起きてる?」
「おはよう、ガロード。どうぞ、」
部屋に入ると、ティファはまだ手紙を書いていたようだ。
「朝食、ここに置いとくな。……あのさ。」
「何、ガロード」
そう真っ直ぐにこちらを見つめられると、今でもどきどきする。
「いやあの……手紙、書けたか? ──カリスへの。」
ティファは机の方を微かに見やった。
「あと、少し。」
「そっか。シンゴがさ、出来てたら貰ってきてって言ってたんだけど……じゃ、また後で来るから。」
「わかったわ。」
ガロードは後ろ手にティファの部屋のドアを閉めると、ふぅ、と息をついた。
(何で俺、ティファの前ではあんなにどきどきしっぱなしなんだろう。)
こんな時、カリスが居れば──同い年同士、話もできるのかも知れないとも思う。
フリーデンに乗ってもう何日経ったのか、ティファが居るから、他のクルーの皆が居るから、自分もこの艦に居るのだと思えるようになってきた。カリスがあの街へ戻ったのも、あそこが彼の居場所だからだ。ないものねだりはもうよそう、とガロードは思った。
(ウィッツとロアビィ、早く帰ってこないかなぁ。)
がらんとして誰も居ない早朝の娯楽室を覗いて、ガロードは食堂へ足を向けた。
キッド相手ではいつもガキの喧嘩になってしまう。ドクター・テクスは頼りになるんだけど、医務室は最後の駆け込み寺という感じがするし、娯楽室とかMSデッキとか……結局一番長い時間を共に過ごしているのが、ガンダム乗り同士というような気もするのだ。彼らは休暇をどこで過ごしているのだろうか。行き先は聞いていない。
(やっぱ、帰るところ、あるのかな。)
自分が休暇を貰うとしても、どこでどうして過ごせばよいのか、ガロードには分からなかった。分かっているのは、そこにティファが居なければ話にならないということだけだった。
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