三 彼女の夢
まだ少し濡れた髪をかき上げて、サラは舷側の窓を何とはなしに見やっていた。ブリッジは宿直のクルーに任せてあるし、一仕事終えた後はゆっくりしたいわよね、と珍しく自分の時間を作ってくつろいでいるという風情である。
でも、いつもの仕事の後とは違っていた。あのティファとかいう少女をキャプテンが誘拐というか救出してからこの船の空気は変わってしまったようだ。勿論、その理由を説明されてからは、キャプテンに対するクルーの信頼も回復したし、日課的には何も変わっていない。でも、何かが違う――そう、やはり艦の中心にあるべきキャプテンが変わったように見えるのだ。理解は出来たけれど納得ができないとでも言うのか、胸の奥に澱のようなものがつかえているようで、どうももどかしい。
かぶりを振ってついた床で、彼女の夢に訪れたのは少女であった。大人びた顔をした少女がただ微笑する。明かりを落とした室内の闇を確かめながら、その夢を『悪夢だわ……』と吐き捨てて、彼女は再び眠りについた。
|
|