Camille Laboratory Top機動新世紀ガンダムX>創作小説>七つの夜、七つの夢

 五 ひとりの夢

 先の戦闘での負傷者のカルテを一通り整理して、テクスはコーヒーを入れようと立ち上がったその目で室外の闇を目の当たりにした。眠ろうと思えばコーヒーでなくてアルコールだなとひとりごちて、彼はスコッチの小瓶を取り出した。普段の『一仕事終えた後』であればそろそろジャミルが尋ねてくる頃なのだが、さすがに今回は彼も相当疲れたらしく、ひとりで素直に休んでいるらしい――というよりも、ひとりにしておいてやった方が良いのだろう。そのくらいの想像は付くから、彼も今夜は早めに休んでしまうことにした。が、しかし。

 『慣れないことはするものじゃないとは良く言ったものだ、』

 普段の睡眠時間を経過してしまうと、まだ明け方には早いというのに目が覚めてしまったのだ。でも、久しぶりにあの頃の夢を見た。十五歳に当てられたかなと思うと思わず笑みがこぼれるが、それでも夢で彼女に再会出来たのなら感謝はしても良いのかも知れない。それが、今はもう彼ひとりの夢でしかないとしても。


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