六 ふたりの夢
月明かりの陰になる岩陰で、シャギアとオルバは傷ついた翼を休めていた。
今までこんなことはありはしなかった。常にふたりは正しく、そして正しい者の前に全ては屈服するはずだった。なのに奴はそうではなかった。ふたりは、初めての敗退を余儀なくされた。
物心ついた頃から、ふたりはいつも一緒だった。一緒に誉められて、『ふたりとも良い子だね』と言われて育ってきた。ふたりを取り巻く視線が冷笑に取って変わっても、ふたりは自分達こそが正しいのだという認識を変えようとは思わなかった。何故そんな必要がある?ニュータイプ?それが本当に世界を変える力なのだとしたら、何故人類は七回も宇宙戦争を起こしてその果てに世界を滅ぼしかけたのだ?それがまやかしの偶像であると気づかない者達など愚の骨頂だ。
ふたりは同じ夢を見る。ふたりは、一つの存在なのだから。世界が一度は滅んだあの時も、ふたりは一つであったから。正しいものだけが世界を変えられる、そのふたりの夢を、月は黙って天空から見つめていた。
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