■on the reset : キョウ編
「皆……っ!」
ソゴル・キョウは一人きりになってしまった舞浜南高校のプールで、その声と肩とを震わせていた。8月31日、舞浜の夏の最後の夜に、ようやく4人揃った水泳部のメドレーチーム。ハヤセ、ウシオ、カワグチとつないできたメドレーリレーは、高校新記録を目指してアンカーのキョウに受け継がれた。だがキョウがゴールしたその瞬間、セレブラントであるキョウ一人を取り残して、舞浜サーバーのデータはリセットされた。想いを一つにして同じコースを泳ぎ、声援を送ってくれていた友人達は姿を消してしまった。今は4月4日の午前0時。
「何か水、冷たくね?」
ゾクっとする感覚を覚えて、キョウは水の中で身震いした。募る一方の寂しさから、余計そう感じるのかも知れないが、それにしても水温が低すぎるような気がする。キョウは、一つの理由に思い当たった。
「──って、4月だから8月より水温が低いってことかよ! んな細かいとこまで再現してんのかよ!? ありえねぇ!」
そう言ってやり場のない感情をぶつけるのに、そのまま4月の冷たい水の中を全力で泳ぎ始めたソゴル・キョウは、やはりただの水泳バカに見えてしまうのだった。
(0609.15)
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