■on the reset : ミナト編
「司令も私も、来期はA組」
ミナトは来期の名簿をまとめながら、つい笑みを浮かべていた。
量子サーバーの中の舞浜南高校には、1学期しか存在しない。通常2学期に行われる、体育祭も文化祭も修学旅行も、ありとあらゆる学校行事が存在しないのだ。ただし、1学期を締めくくる全校規模のイベントが一つだけあった。球技大会である。
1学期の期末試験が終わってから終業式までの間に行われる球技大会は、学年を縦断してのクラス対抗となっていた。つまり、1年生から3年生まで、A組ならA組で成績を加算しての対抗戦であり、応援合戦も学年を問わず協力して行われるものであった。
来期はシマが3年A組、ミナトは2年A組。学年も性別も違うから同じ試合にこそ出られないが、ミナトが同じA組のシマを応援するのに、何ら不都合はなかった。思う存分、シマの応援が出来る。それはシマに想いを寄せるミナトにとって、ささやかな楽しみであり──想いを伝えられる絶好の機会でもあった。
そう目論んで、毎回リセット毎にシマと同じクラスに自分を配属するのだが、オケアノスでの任務に追われる司令と副司令という立場では、まともに球技大会に参加できたためしはなかった。確かA組は、優勝するのではなかったか。
「今度こそ、球技大会に出られますように」
間近に迫ったリセットを前にして、ミナトは思わず西の空の明るい星に祈った。球技大会はともかくとして、この想いが、彼に伝わりますように──と。
(0609.15)
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