■on the reset : クロシオ編
「来期はC組か」
来期の名簿を見ながら、クロシオは自分のクラスメイトを確認していった。もとより舞浜は彼にとっては仮初めの宿、セレブラントとして守るべきサーバーとしては認識しているが、サーバーに保存されている幻体である舞浜南高校の生徒たちに、特に愛着を感じている訳ではなかった。クロシオは静岡サーバーで目覚めて以来、転戦に次ぐ転戦でドライダメージを蓄積してしまい、その体はゼーガペインでの戦闘に耐えられなくなっていた。長い間、同じ時が繰り返すのを体験してきた彼は、リセットの度に記憶を無くしてまっさらな青春を謳歌する『同級生』とは、精神状態が異なりすぎているのだ。
だが、2年生の名簿を見ているうちに、ふとクロシオは目を留めた。
「この子は……」
舞浜南高校で五本の指に入ると言われる美少女が、2年C組に居るのである。精神はともあれ、彼の肉体年齢は高校2年生。美少女に目もくれないほど枯れ果てている訳でもない。思わずごくりと、生唾を飲み込んだ。
クロシオは、自分をC組に配属してくれた有能な副会長に感謝した。
「クロシオの姿が見えないが」
「今、授業中です」
自分達は授業に出ないまま、オケアノスのブリッジでミナトはシマに答えた。
「珍しいこともあるものだな」
「舞浜に愛着が出てきたのなら、それも良いかと」
ミナトの言葉に、シマは薄く笑うだけだった。
(0609.15)
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