■on the reset : イリエ編
結局シズノは、舞浜南高校に今期も転校生として編入されることになった。
セレブラントは別々のクラスというルールに則り、3年生はシマがA組、イリエがB組ということで、シズノはC組に割り当てられた。
シズノの編入が決まった後、オケアノスのブリッジでシマとシズノをちらりと伺うと、二人の交わした視線に、何とも表現しがたい、ある種の緊張感と揶揄とが漂っている。
この二人のどちらかとでも、同じクラスでなくて良かった。
イリエは密かに、クラス編成のルールに感謝した。
オケアノスでの任務が本分だが、舞浜南高校に在籍する以上は、不自然にならない程度に授業にも出なくてはならない。代わり映えのない日々とはいえ、本来のイリエが失くしてしまった高校生としての時間がそこにはあった。クラスメイトとの他愛のない会話に顔を出す、稀なイレギュラーを見つけられれば、それは数少ない楽しみとなる。
「……どうして?」
イリエがその教室の扉を開けたとき、そこにはあるはずのない光景があった。
目を丸くして立ちすくむ、そのイリエの視線の先にはおなじみの二人が、似てない双子のような顔をして座っている。
「イレギュラーだな」
「イレギュラーよね」
3年生ともなれば、選択科目によって適宜クラスが編成されるため、通常は別のクラスの生徒と同じ教室で過ごす時間も多くなる。だからといって、何故ここにシマとシズノが顔を揃えて席についているのか。
「教師の割り当てにトラブルが起こったらしい」
「どういう訳か、本来少人数3クラスなのに、この時間はまとめての授業になってしまったようなのよ」
二人とも普段どおりの涼しい顔をして並んでいるのが、笑っていいのかどうか微妙なところだ。イリエはどこか顔がひきつるように感じながら「そう」と応えて、自分の──何の因果かシマの隣の席についた。
「あー皆、すまんな。今週だけだから、勘弁してくれ」
チャイムと同時に、教師がそう言いながら入ってきた。3クラス分の生徒が詰め込まれた、いつになく大人数の教室を見渡して、イリエは盛大にため息をついた。
(0609.15)
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