Camille Laboratory : ZEGAPAIN Topゼーガペイン>創作小説

 こちらはC79冬コミ発行予定のゼーガペイン本(同人誌)「Quantum Leap 12 : call my name」のサンプルページです。興味を持たれた方は是非出版課をご覧ください。


call my name
名前を呼んで




RYOKO and SIZUNO
entanglement18「偽りの傷、痛みは枯れて」より




<略>

「じゃね、カミナギさん」
 リョーコの名乗っていない名をそう呼んでミズキは去った。ミズキがB組に来たのは二人を合わせようとするD組のキョウの差し金だろうとリョーコは踏んだ。その直後にリョーコを迎えに来た彼の反応を見ればそれは正しかったようだ。彼は彼なりに正しいことをしているのだとリョーコは理解した。

 ミズキとは休み時間や放課後に話をするようになった。クラスも部活も違うのに、ミズキはリョーコと仲良くしてくれた。ある日リョーコはミズキに尋ねてみた。
「どうしてミズキは私につきあってくれるの」
 ミズキはその問いに瞬いた。
「友達だからじゃん……理由が要るの?」
「あるなら聞いてみたい。ないなら構わないけど」
 リョーコはじっとミズキを見詰めて返事を待っている。ミズキは小さく息をつくと、視線を僅かに逸らした。

「ぶっちゃけ、最初はソゴルに頼まれたんだけどさ」
 それは知ってる。とリョーコは胸中で呟いた。
「でもあいつに頼まれたからーってんじゃなくて。ちょっと変わってるかもしんないけど、映画とか好きな子なら、話してみたいなって思ったのはあたしだし」
 確かに私は変わってる。リョーコは黙ってそう認めた。

「それに何か、初めて会った気がしなかったんだよね」
「えっ」
 リョーコはその言葉に小さく声を上げた。セレブラントではないミズキの記憶はリセットされている。前のループで親友だったことを覚えていないはずなのに。
「あいつに言われなくても、いずれこうなっていたんじゃないかな。──それが運命だ。なーんて言うと、それこそ映画か何かだけどね」
 芝居がかった抑揚はミズキらしい喋り方だ。彼女は微かに笑ってみせて、リョーコに向き直った。

<略>

「戦えさえするなら、プライベートがどうだろうと構わんさ」
 オケアノスの司令私室で最終作戦を示唆したシマがそう言い放つのを、シズノは聞きとがめた。
「私にどうしろと言いたいの」
「好きにすれば良いだろう、僕は干渉する気はないよ」
「貴方にはそんな余裕もないのでしょう」
 眼鏡を外して目蓋を伏せるシマに気遣う声を掛けつつもシズノはため息をつきたくなった。

 セレブラムの最終作戦、人類再生計画の鍵を握るのはキョウとシズノだということはシマに言われずとも分かっている。精神的な問題さえクリアすればキョウは戦力として申し分ないことも、シマに答えたとおりだ。それに対するシマの言葉は先の通り、キョウのプライベートが充足して精神的に安定するのが先決と言われたも同然だ。

 キョウの精神的な問題はプライベートの問題に起因している。パートナーであるリョーコの身の上に降りかかった出来事を思えば無理もないとはシズノにも分かる。彼女の データをサルベージしたのは他ならぬシズノだからだ。

 シズノがキョウのパートナーであり、それ以上の関係にあったのはもう過去のこと。キョウがその記憶を失ったのは彼自身の選択によるものだ。リブートした彼とリョーコの関係を舞浜で見ていれば、あの二人が幸せになってこそ未来があるのだろうということはシズノにだって分かる。分かってはいるけれど、あの二人のためにどうしてやればいいのかなど、シズノに分かるはずもない。

 シズノは一度は舞浜の彼の元から離れるつもりだった。けれど思いがけないキョウの言葉が、シズノを再び舞浜南高校に向かわせた。






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