Camille Laboratory : ZEGAPAIN Topゼーガペイン>創作小説

 こちらはC79冬コミ発行予定のゼーガペイン本(同人誌)「Quantum Leap 12 : call my name」のサンプルページです。興味を持たれた方は是非出版課をご覧ください。


last summer memories
酔夏




KYO & RYOKO in past days
entanglement05「デジャビュ」より




<略>

「キョウちゃんのバカ」
 それは彼と別れる前、公園のタコの遊具に見つけた幼稚園の頃のリョーコの落書きと同じ言葉。そんな小さな頃から高校一年生になった今まで、二人の関係は変わっていないというのだろうか。

 同じ棟の同じ階のお隣さん。同じ年のリョーコとキョウはすぐに仲良くなった。一緒に遊んでは喧嘩をして、また仲直りをした。学校で同じクラスになったり、離れたり。でもいつも彼の姿が視界にあったとリョーコは振り返る。
 ふと思い立って、リョーコはPCに保存した動画を日付順で並び替えてみた。残っている中で一番古いファイルの日付は昨年のものだった。

 それは中学三年生の夏休みのこと。
 リョーコの家に上がりこんで、キョウはリョーコの弟のコージーと一緒に昼寝をしていた。遊び疲れてリビングにごろんと転がった二人は、髪の色こそ違えどまるで本当の兄弟のようにも見えた。
 コージーも大きくなったと思うけれど、キョウが投げ出している日焼けした手足はずっと長い。背が伸びた彼は教室では一番後ろの席に常駐するようになっていた。

「そろそろ起きたら? スイカ切ったよ」
 リョーコがそう声を掛けると、二人はぽつぽつと起き出して、ふわぁと欠伸をした。
「あー、キョウちゃんが欠伸の真似したー」
「欠伸はうつるもんなの」
 そう答えながら、キョウはコージーのめくれたTシャツの裾を直す。自分の赤い髪をくしゃくしゃっと直すようにかき上げて、コージーのお尻をぽんっと叩くと、勝手知ったる風に洗面所へ行った。

 顔と手を洗ってきた二人がローテーブルの前に揃ってあぐらをかいて、両手を合わせる。
「いっただきまーす」
 やおらスイカにかぶりつく、男の子二人の食べっぷりは見ていて楽しい。
「んまいぞーこいつ、カミナギも食えよ」
「うん」
 そう答えてリョーコはキッチンに戻ると、小皿にスプーンを取ってきた。
「なんだよそれ」
「スイカ食べるんでしょ」
 スプーンを持ったリョーコの前で、キョウはスイカの皮を両手にしたまま、身をごくりと飲み込んだ。

「普通に食えよ」
「だから、女の子の普通の食べ方するんでしょ」
「あそっか、お前女だっけか」
 からからと笑うキョウの真似をしてコージーまで笑い出すのがリョーコには腹立たしい。
「たくもー」
 そう言いながらも、リョーコの顔にも笑みが浮かぶ。スプーンにすくったスイカの爽やかな甘味に、ぱらぱらと振った塩味が心地好かった。

 何故キョウがこの夏はリョーコの家に入り浸っているのか、リョーコはその理由を知っていた。






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