Camille Laboratory Top機動戦士Ζガンダム>創作小説>遅れてきた誕生日

「何か嫌なこと思い出させたかしら」
 珍しく声を沈ませるナナに、カミーユは微笑を見せた。
「そんなことはないって。ほんとありがとう」
「いえどういたしまして。あ、研究室の方にもお土産渡してきたから。」
「悪いね、気を使わせて」
「良いのよー。っていうかさ、あなたにそう言われると何か後が恐いわ」
 眉根を寄せるカミーユの顔を見て、テオがナナを軽く小突いた。
「やめないか、ナナ」
「はいはい。ほんと、ごめんなさい。」
 ナナはぺこり、と頭を下げた。

「で、何だって今頃健康診断なのよ? もっと前にやったんじゃなかったの?」
 ナナが問うのに、テオとカミーユは顔を見合わせた。
「それは……色々忙しくて、」
「出社してくる度に声掛けても医療部に来ないんだからな。上から色々言われるんだから、ちゃんと受けて貰わないとこっちも困るんだぞ?」
「今日受けたんだから良いだろ、」
「そうだけどさ。何だってファみたいな奥さんが居て、勤務先の健康診断ひとつちゃんと受けられないんだかね」
 そのテオの物言いに、カミーユは目を逸らした。
「ファとは関係ないだろう、いくら彼女が病院勤めだからって」
「こないだ話をしたらさ、検診のこと知らなかったって言ってたぞ? 彼女だって心配してたんだから、来年は真面目に受けてくれよ」
「……分かったよ。」
 不承不承とした風に答えて、彼はお茶に口をつけた。

「ふふーん」
「……何だよ、」
 にやにやと笑みを浮かべながらこちらを見遣るナナに、カミーユは訝った。
「相変わらずねーあなた達。よく続くなぁって思うけど、逆ね。ファじゃなきゃやってけないわよねーあなたなんかとは」
「ナナ。」
 『いい加減にしないか、』とテオは小声で言い添えた。
「そういうナナだって、全然変わってないぞ? もういい大人なんだから、子供みたいにカミーユをからかうのはよさないか」
 テオにそこまで言われて、さすがのナナも肩を落とした。
「……そうなのよね。さっき謝ったばかりなのに。何でかしら。久しぶりに会ったんだから、もっと楽しい話をしなくちゃいけないのにね。ほんとごめんなさい」
「いいよ、もう慣れたし。ナナがその言葉通りのことを言おうとしている訳じゃないってことくらいは分かってるさ」
「そう?」
「さっきのも君なりの褒め言葉だろ? 確かにファじゃなきゃ駄目だと思うよ、それは──俺が一番良く分かってるんだから」
 そんなことを言うカミーユにテオとナナは顔を見合わせて、くすりと笑った。

「検診といえば、だけど」
 テオはそう言って隣のナナをちらりと見た。
「市民検診、受けに行ってないってファから聞いたぞ」
「あー。そうかしら。そうねー、色々忙しくて」
 天井を仰ぎながら返事をするナナに、テオは溜め息をついた。
「今月中なら無料受診できるんだから、予約入れてくれってさ」
「ハイ。分かりました。連絡しときます」
 殊勝にうなづくナナに、カミーユが軽く吹き出した。


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