Camille Laboratory Top機動戦士Ζガンダム>創作小説>eyes on you

「チョコレートに……酔った、」
「え?」
 しっかりしてよ、と言いながら表情を確かめる。確かに頬はやや上気して朱が差していて、重そうな目蓋から覗く瞳は、とろんとしているが笑ってはいない。
「お冷持ってくるわね、」
 ソファを立とうとするファのスカートを捕まえて、ファが振り向くとじっと見上げて口を開く。
「ごめん……」
 言ってカミーユがファのスカートから手を離す。ハイハイ、と思わず笑いながらグラスに水を注いで渡すと、カミーユはごくんと飲み干して溜息をついた。

「大丈夫?」
「ナナの嫌味だな、」
「何よそれ。」
 正直その彼の言葉の意図が分からなくて、ファは尋ねた。
「喫茶部でテオとザッハトルテ食べて、研究室でナナのお土産のチョコ食べて、で、家でもだろ。同じ日に重ねるなんて嫌味じゃないか」
 後の二つはともかく、最初のは自己責任だと思うが。
「そんなに食べてたのなら、今晩はやめておけばよかったんじゃないの」
 このひとは子供かしら、とファが思っていると、その胸中を肯定するような返事が返ってくる。
「だってあいつ、俺がチョコレート好きなの分かっててやってるんだぜ。嫌味だよ、絶対。」
 頬を軽く膨らませるカミーユに、ファはもう笑うしかなかった。
「はいはい、分かったからもう大人しく寝なさい。」
 クッションを抱いて恨めしそうにこちらを睨んでくる、そんなカミーユに構わずにファはテーブルを片付け始めた。

「ほらもう寝てなさいって……寝てるのね。」
 洗い物を終えてリビングを覗くと、ソファでカミーユが静かな寝息を立てていた。天使のようなあどけない寝顔……とは褒めすぎかもしれないが、平和な顔をして眠っているのを見ると、こちらまで安らいだ気持ちになる。今はこのまま寝かせておいてあげよう、とファは思って、彼を起こしてしまわないようにそっと隣に腰掛けて、そのまましばらくカミーユの寝顔を見詰めていた。


(0203.10)



あとがき

 研究室サイト1周年記念の主任さんの誕生日話「遅れてきた誕生日」のファ登場編です。書き直し、というよりは続編っぽい感じになりましたが、如何でしたでしょうか。

 前回よりちょこっと長くなりましたが、書いてる最中から、これはあと1本書かないと終わらないかも……などと。誕生日話のはずがまるで『ナナのホンコン土産シリーズ』化してしまうもので、オリキャラ話というのもどうかと思うのですが、ご意見お伺いできましたら幸いです。よろしくお願いします。

 でも今回のお題は何と言ってもタイトルの「eyes on you」ですので、そのあたりの甘々と、甘いだけでは終わってないあたり……をお読みいただければとも思います(^^)


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