Camille Laboratory Top機動戦士Ζガンダム>創作小説>Imaginary Works

「で、俺に何をしろって?」
「ん。単刀直入に言えば、アーガマのメインコンピュータをハックして欲しいんだ」
 カミーユはきょとんとして、トーレスの顔を覗き込んだ。
「何もやましい事じゃない。ちょっとした悪戯さ」
 深く大きく息を吸ってみて、カミーユは声音を変えた。
「アーガマはエゥーゴの旗艦だぜ? 悪戯といっても、穏やかじゃないじゃないか」
「そう来ると思った。だから、お前に頼んでるのさ」
 釈然としない表情のカミーユに、トーレスは尋ねた。
「今月の末、何があるか知ってるか?」
「十月の? 何かあったっけ……?」
「ハロウィンだよ。やったことないか?」
 その言葉に、カミーユは目をしばたいた。
「かぼちゃのお化けがお菓子をせしめに来るって、あれ?」
 トーレスは笑って頷いた。
「別にかぼちゃでなくても構わないんだけどな。子供が仮装して、『お菓子くれなきゃ悪戯するぞ』って言いながら家々を回るって行事さ」
「良く知らないけど……それがどうかしたのか?」
 ますます分からないカミーユを尻目に、トーレスの語はなかなか核心に追らない。
「前にシンタとクムにさ、ハロウィンの話をしてやったのさ。そしたら、あいつら面白がって、やるってきかないんだよ」
 そういう話なら、分からなくもない。ファが世話をしているのを間近で見ているからというだけではないが、突然戦艦に連れてこられてしまった子供達のことは、カミーユだって気に掛かっていた。
「こんな生活じゃ仕方ないよ。でも回られた方は迷惑だな。皆疲れてるんだから」
「それがあるんだよな。アストナージさんなんかはノッてくれそうだけど、ヒス起こすような人がいたら、お前らの監督不行き届きになっちまうんもんな」
「他人事みたいに言うなよ、元凶はお前のくせに」
 ふくれるカミーユに、トーレスは笑った。
「言うなよ。……でさ、当日までに、俺たちの方から話を付けておいて、ある程度は回らせるようにしてやるのさ。それは俺がやるから。で、キリをつけるのに、何を使うかなんだけど……」
「それがこの話?」
「察しがいいな。お化けを出して驚かしてやるのさ」
「お化けを出す?」
 察しが良いとは言われても、察するにも限度があるというものだ。
「艦内モニタには、緊急メッセージの投影機能があることは知ってるだろ? あれに映像を潜りこませるんだよ」

 艦内モニタはアーガマの至る所に配備されている。それらをうまく使えば、立体映像の投影は可能のはずだ。だが、艦内モニタへ映像をもぐり込ませるともなれば、通信関係のシステムを制御しているメインコンピュータが関わってくる。
「俺もさ、一度はセキュリティコードでアクセスしてみたんだけど、どうも入れないのさ。それで、お前に頼んでみてるってワケ」
「確かに悪戯だな……でもハックの必要はないな。」
「どうしてさ、」
「メインコンピュータに直接アクセス出来ればいいんだろ? だったら俺のコードでアクセスすればいい」

 カミーユは話に乗った。大体、最近シンタとクムは生意気だ。この世には、ファとお風呂以外に怖いものはないと思っているらしい。宇宙にだってお化けはいると思わせてやった方が、少しはおとなしくなるかも知れない。

  AHGAMA MAIN COMPUTER
  ACCESS CODE :

「ここで、セキュリティコードだと許可が出ないんだよな」
「じゃあこれは?」
 カミーユは素早くコードを打ち込むと、肩ごしにトーレスに笑ってみせた。
「で、通信の下の、艦内モニタだよね?」

  DIRECTORY : COMMUNICATIONS
  OPEN : INTER-MONITORING SYSTEM

「ここだここだ。さてと、問題の映像制御は何処でやってるんだ?」
 プログラムの数は膨大で、どれが何をしているものか、ぱっと見では見当も付かない。
「……そりゃ、いじる方は分かってるからいいんだろうけど」
「また調べてみるよ。俺の仕事だし」
「トーレスが知らないというのも変だね?」
「セキュリティコードで覗けるのは、時と場合によるんだよ。定期的なメンテの時に、検査プログラムを走らせる位だからな。せいぜい艦内モニタでエラーを起こして、突き止めるとするか」
「場当たり的でやばそうだな。あ、その検査プログラムって何処にあるの? それで調べられるかも知れない」


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