Camille Laboratory Top機動戦士Ζガンダム>創作小説>薤露青

「ナナの心配することじゃないさ」
「どーゆー意味よ」
 どうもこんなナナは揶揄してみたくなる。
「奴には良いひとがいることだしさ。大丈夫、なんだかんだ言って奴は強いよ」
「そうは見えないから言ってんじゃない」
「だったら今度奴に言ってご覧」
「そんなこと出来ないわよ。もぅいいわ。あんな奴のこと知らない!」
 むくれたナナはいつものこと。テオはそんな様を微笑みながら眺めていた。

『でもね、ナナだけが心配していることでもないのさ』
 テオは、また踊り場の絵に目をやった。

 くしゅん。
「あらやだ、風邪?」
 ファはカミーユを心配そうに覗きこんだ。
「そうは思わないけど……」
「じゃ誰かの噂ね」
 ファはくすりと笑った。
「どーせテオとナナがあることないこと喋ってるのさ」
 カミーユはさも面白くなさそうに眉根を寄せる。そんなカミーユを見ているのは確かに可笑しいのだけれど、こんなことを彼が言うようになるとも思わなかったのも事実で――抱きしめたくなる。
「いいお友達じゃない。大事にしなくちゃ」
「そうかも知れないけどさ……」
 まだ何か不満があるらしいカミーユに苦笑したファは、目をやった先にお茶の店を見とがめて、彼の方を向いた。その瞳に宿る光が、少々いたずらっぽい色をしているのに、カミーユは戸惑った。
「病除けのお茶、買っていかない? 風邪だったら治るかもよ」
 なんだそういうことか、と合点して、顔が綻ぶ。
「さっきの青いお茶かい? いいよ、」
 ファは先に立って店に入っていった。彼女を見守る瞳の青の、その暖かさを感じながら。


(9608.03)



あとがき

 実はこれは当初「ラブコメ」をお題に書かせていただいたものでした。コメディって感じではないかもですが〜。「Silent Bells」のテオとナナを初めて書いたものでした。結構このひと達が出てくる「大学編」もネタが色々あるんですが、オリジナル色が強いんでちと書き辛い……と言いつつも、その後の研究室話をちょこちょこ書いてたりもするのですが。そういえば誕生日編の続きもまだでした(_o_)

 なお、文中の『薤露青』については『宮沢賢治全集 1』(ちくま文庫1986)および『宮澤賢治 星の図誌』(斎藤文一・藤井旭(写真)、平凡社1988)を参考にさせていただきました。

 それからマルバティーはマローブルー(和名では「薄紅葵(うすべにあおい)」)のお茶でして、以前読ませていただいた同人誌で知ったものですが、ほんとに青いお茶で綺麗なんですよ〜。ニルギリは紅茶の一種で、すっきりとした爽やかなお茶。余談ながらニルギリとは現地の言葉で「青い山」ということで、ここにも青があったりしました。マローブルーもニルギリもネットで手に入りますが、紅茶やハーブティーを扱っているお店に置いてあったりもします。

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