Camille Laboratory Top機動戦士Ζガンダム>創作小説>魔法使いと王子様

「さっきも言ったけど……僕がもっとうまくやってたら、君が困ることもなかったのにな、」
「何でカミーユが責任感じなきゃいけないの? 私が焦ったのが悪かったのよ。」
「そうだろうか?」
「そうよ。あ、そうだカミーユ――」
「何?」
「さっきね、『凍りつきそう』って言ったでしょ、私」
「それで?」
「マーク2が落ちる前にも同じ感じがしたの……ホラ、カミーユが『とりつかれる』って言った時と同じような感じだったの」
 カミーユは驚きと――恐怖の入り交じった目で私を見た。
「ねぇ、知ってるのなら教えて。あれは何だったの?」
 深く息をし、不思議なくらい落ち着いた声でカミーユは答えた。

「……。僕の記憶では――君の言う『不安定』で、あまりはっきりしていないんだけれど。それでも漠然とね……とりこまれたら、自分ではなかなか抜け出せずに……自分でなくなってしまうことだけ覚えてる。僕自身が実際そうなったのか、他の人がそうなったのを知っているのか、の区別はやっぱりつかないけど。あの時は――ゾッとして……なかなかいい表現だな、『凍りつきそう』って」
 さっきまであんなことを言っていたのに……にこっとしてみせる。でもそれは一瞬で、また深く思いつめた表情で、話を続ける。
「ゾッとして……止めなきゃならない、って思ったんだ。二度と……あってはならないことなんだから、止めなきゃならない……って。近付けばどうなるかってこと、一瞬で思い出したんだ、あの時。」
 言って……その『記憶』に耐えるかのようにきつく目を閉じる。

 そして私は……あの寒さを思い出した。さっきと違うのは明るいってこと。あたり一面真っ白で……これ、雪かしら? でも寒さは変わらない。風。燃えつきそうな熱風と凍りつきそうな寒風とが一度に押し寄せてきて、私を……いや! 私は……ジュドーの所へ行くんだから! 離して、まとわりつかないで! ……助けてジュドォ……「早く!」……カミーユが、走ってる……? 雪……爆発、破片。カミーユは走る。何かを深く思いつめて……寒い。彼の涙が雪になっていく……白い雪原――空は涙色に濡れて――冷たい……それになんて息苦しいの。カミーユ……また走ってる……「こんな所で走ったらだめ! 息ができないじゃない……」「じゃあどうしろっていうんだ? 誰か他に走れる?」「……でも、だめよ……」「何故!?」「凍ってしまうわ……今度こそ……」

「そうかもね」ぽつん、とカミーユは言った。「ごめん、どなったりして。」
「気にしてないわ」私は答えた。「それより、さっきのは……?」
「分からないけど……僕の記憶かも知れない。」
 あいまいなのね……
「ねぇ、何でそんなに記憶があいまいなの?」
「それこそ分からないよ。それに……」
「それに?」
 いたずらっぽく笑って、
「今こうして話をしていられる、って方が不思議なのさ。僕にとってはね」
「記憶が……あいまいだから?」
「それもあるだろうけど……何だかね、僕自身が拒否しているみたい……って言ったら分かるかな?」
「わかんない。」
「外界との接触をね、極力抑えてるっていうか……いや待てよ。その逆もある……」
「開いてる時と、閉じている時がある、っていうの?」
「そうみたいだな……差がすごく大きいけどね。それに『開いてる時』はほんの少しだけ。あとはさっきの暗闇みたいさ。寂しくなって少し『開ける』だろ、そうすると洪水さ。一度にいろんなことがありすぎて、収拾つかなくなっちゃって……」
 カミーユはため息をついたようだった。
「それで結局『閉じ』ちゃうのね。でも――だめよ」
「何故?」
「凍ってしまうわ……一人であんな所に居たら、今度こそ……」

『プル! 聞こえてるかぁ?』


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