「ビーチャだわ、」
「何かがこっちに向ってくる……見覚えあるようだけど、」
「きっと百式よ」
「百式……? その奥の――」
言うなりカミーユは立ち上がった。
「ジュドーよ! コアファイターでしょ」
やっぱり王子様は来てくれたんだわ……えっ?
「あんな所飛んでたって……落とされるだけだ!」
「カミーユ……?」
様子が少し違うみたい……さっき、私に声を掛けてくれた時みたい。何だかこう……鋭い、っていうのかしら? そんなカミーユは私をじっと見つめ、言った。
「君の言うとおりかもしれない……。今は『開いて』いるから、君を助けられたんだと思うし、彼の危険も分かるのかも知れない」
あなたまさか――
「何だか限界みたいなんだ……走れる内に、走っておかなくちゃ……」
そして向こうを向いたまま、言った。
「君の読んだっていう本、僕も読んだ覚えがあるよ。確か魔法使いはさ、王子様が黒い魔法使いを倒せるように、昔自分が使った剣を捜しに行くんだよね。僕は剣を持ってた訳じゃないけど……捜しものをしなきゃ……」
「カミーユ……」
彼は振り向きざま、笑った。
「姫はここに居てください。僕はちょっと王子様を手伝いに行ってきますから、」
そして走っていく後ろ姿が、消えた――
それからどれだけ経ったのか――
ビーチャに助けられ、私はマーク2の外に出た。
「プル!」
あ……王子様……来てくれたのね。
「動かしちゃだめ! そっとしてあげなくちゃ……」
ファ……? カミーユを捜して、って言いに来た人だわ。教えて、あげなくちゃ……
「私、知ってるよ。カミーユの居る所……」
早く行ってあげなくちゃ……凍ってしまわない内に……
とにかく、私達はカミーユに会った。
ファは思わず彼に抱きついたが、真っ青になって、崖の上の私達を振り向いた。
「イーノ……手を貸してくれる? カミーユ、すごい熱なのよ」
「何だって――!」
みんな異口同音に言って、ジュドーは私を抱えたままだったけど、一斉に崖を下りた。
さわらなくても、彼の熱は感じ取ることができた。
「あの時と一緒だわ……」
ファがぽつりと言った。
「あの時、って?」ジュドーが尋ねる。
「グリプス2の後よ、」
それっきりファは黙り込み、ジュドーも詮索するのをやめた。私はといえば……全身を襲う痛みに耐えながら、何かを捜しに行ったきり戻ってこないカミーユを捜していた。
「ファさん、」
アーガマへ連絡をしにコアファイターの所まで行っていたイーノが戻ってきた。
「これからアーガマはノルウェーのカラバ基地まで行って、そこから宇宙へ上がるんですけど、ファさんとカミーユさん、戻りたいのなら一緒に来ませんかって、ブライト艦長が言ってました」
ファは目を見開いた。
「良いのかしら……? 私達が一緒でも」
「ファさんは……カミーユだって、アーガマのクルーじゃないか。良いに決まってるよ」
「ジュドー……」
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