Camille Laboratory Top機動戦士Ζガンダム>創作小説>魔法使いと王子様

「トーレスやキースロンだって喜ぶわよ、きっと。あ、アストナージさんだって」ルーが明るく言った。
「あの人、一番心配してたもんな」とビーチャ。
「そうそう。ブライト艦長もさ、さっき連絡した時、今にも飛び出していきたいって顔だったよ」とイーノ。
「みんな……」
 ファは何と言っていいのか分からない、という風に、ジュドー達を見回した。

「ありがとう、って言えば良いのよ。そういう時は」
「……プル?」
「それに私……カミーユは宇宙に戻りたがってるって思うわ」
「カミーユがそう言ったの?」
 あら? ファは私がカミーユと話したこと知ってるのかしら?
「言った訳じゃないわ。けど……」
 彼は寂しがっている。一人で泣いている。そして微笑む。息苦しくて、とても寒い所で彼は走っている……。何もかも、誰も彼も包んでしまいそうな優しさと、氷よりも冷たい悲しさが一緒になっている彼の心……絶対0度っていう、この世で一番冷たい世界なのに、とてもあたたかい宇宙……彼の心は宇宙なんだわ。そして地球に居る彼は、何かを捜しに……きっと宇宙へ行ったんだわ。
「ありがとう、プル。教えてくれて」
 ファは笑った。
 そしてつられて私も笑った。

「じゃ、そうと決まれば早いとこアーガマに戻ろうぜ」
 ビーチャが言って、みんなでマーク2の方へ歩いた。
 私はジュドーに抱えられ、ΖΖへ。
 カミーユは結局ルーとΖに乗ることになった。
 ファはエレカを返すついでに、病院と下宿に行ってくるというので、後でエルがコアファイターで迎えに行くことになった。
「じゃ、ルー……カミーユをお願いね。」
「了解。ファさんも気を付けてくださいね」

 無線を全開にしてあるので、コックピット付近の会話はよく聞こえる。ファの足音がΖから遠ざかってゆき、ハッチが閉まる。ΖΖとΖでマーク2を運び、その後ろに百式と、イーノとエルのコアファイターが続く。
「ルー、」
「どしたの、ジュドー」
「んー。カミーユどうかなって思って……」
「じっとしてるわ。ずーっと空の方を見てる……」
「そう、」
 ジュドーもきっと分かってるんだわ。彼が空の向こうを見てるってこと……
「Ζってさ、ジュドーの前はカミーユだったんでしょ?」とエル。
「じゃあさ、何か思い出したりしてるのかな?」とイーノ。
「女の子乗せたこととか思い出したりして?」とビーチャ。
「そしてファさんに怒られたこととか思い出したりして!」とモンド。
 しばらく笑い声がコックピットに満ちた。
「でもねー。それ本当にあったんだよー」とクム。
「え、本当なの?」とイーノ。
「ウソじゃないよ。何人連れて来たっけ?」とシンタ。
「後でトーレスに聞いてみよ!」とエル。
「本気か?」とジュドー。
「冗談、冗談!」笑って、エル。
「じゃあ俺が聞いてみよっと!」とビーチャ。
「あなた達ねぇ、」ルーの低い声。「少しは静かになさい! 医務室直行が二人も居るのよ!」

 アーガマに先に連絡が行っていたおかげで、私とカミーユはすぐに医務室のベッドに横になれた。カミーユの熱をみていたアンナが、「あの時と同じだわ……」とつぶやいて、タオルを濡らしはじめた。
「ファさんと同じこと言ってる……『グリプス2』でしょ?」
 私と同じことを思ったらしいジュドーが言った。
「ファも言ってたの、」
「『グリプス2』って?」私がきくと、ジュドーが早口で、ささやくように言った。
「エゥーゴとティターンズの最終決戦があった所さ。『グリプス2』っていうのはコロニーレーザーのことだけど」


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