Camille Laboratory Top機動戦士Ζガンダム>創作小説>魔法使いと王子様

「ねぇ、なんでマーク2の話なんてしてたの?」とエル。
「私がΖのクセの話をしてたら……プルがマーク2へ持ってったのよ」とルー。
「あ、そーだった。で、何で『Ζが素直』だったのさ?」とジュドー。
「?」エルはきょとんとルーを見る。
「あのねエル……さっきのカミーユの声って、どう思った?」
 私がルーに助け船を出した。
「ウン……とりたてて考えもしなかったわ。聞いた時にはね。後でびっくりしたけど」
「結局エルも素直に聞けたんだろ?」とジュドー。
「そういうことね」
「その時に――ね」やっと、ルー。「いつもあるはずのあのクセがね、素直だったのよ」
「クセが素直?」
「いつもみたいにぴょーんっていくんじゃなくて、ふわーっていったのよ。びっくりしたわ。」
「あれ?」とジュドー、首を傾げて。「そう――初めの頃のΖってふわーっていったぞ?」
「じゃああれは……カミーユのクセだって言うの? ジュドーは」とルー。
「断定はしないよ。俺の思い違いかも知れないし。でもさ、やっぱり不思議なんだよ」
「そうね、それは断定できるわよね。」ルーはうなづいた。
「確かに不思議ね。私やジュドーより四つくらい年上なんでしょ? なのになんだか親近感……」とエル。
 『親・近・感』か。そういう言葉もあるのね。
「私――カミーユ好きだよ」
「プル……?」カーテン開けて、ファ。
「あ、ファぁ。そっちの意味じゃ……ないよ。」
 だって、そっちの意味で好き・なのは……
「私の王子様はジュドーだもん」
 ジュドーが椅子から落ちそうになった。私そんなにヘンなこと言ったのかしら? 私はさっきの本を抱きなおした。
「あ……その本?」とエル。
「それでエル、プルのことを『お姫様』だなんて言ってたのねー」とルー。
「王子様、か……」ジュドーが頭をかいた。「俺、そんな柄かなぁ……」
「ねぇプル、」とエル。「プルがお姫様で、ジュドーが……その、王子様ぁ、ならさ、魔法使いは誰なのよ?」

 魔法使い。王子様を手伝って、お姫様を助け出した魔法使い……

「そんなの」私はちらっとファ達の方――カミーユの居る方――を見て、言った。「カミーユに決まってるよ」
「言えてる……」とエル。
「でもさ、そうすっとさ……カミーユはプルだけの魔法使いじゃないな」とジュドー。
「そうね。まだ……会ってから数時間しか経ってないのに、これだけ影響されちゃってるものね」とルー。「これはもう魔法よ」
「そういう風にも……言えるかも知れないわね。でもね、プル。私さっきうれしかったのよ」とファ。
「カミーユを好きだって言ったこと?」
「えぇ……」
 『Love』や『Like』とかいった意味じゃなくて、ね。みんな好きよ、きっと……

「カミーユが魔法使い、か……」トーレス・キースロン・アストナージが考え込む。
「さぁてまずいぞ」
「またポーカーでパクられるぞ」
「また女の子がひっかけられるぞ」
「もう遅かったりして」三人、また笑う。
「ンもうっ! 三人ともっ!」ファ、真っ赤……「私ね、ダブリンでは看護婦の見習いやらして貰ってたんだけど……診てさしあげましょうか?」
「いいって、いいって!」トーレスは時計を見ながら、三人は逃げるように医務室を出て行った――というより、あれは、逃げたのね。


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