Camille Laboratory Top機動戦士Ζガンダム>創作小説>恋愛症候群

 ほんと! 本当にあなたって上手いわよ。
 そう思った私の視線、彼とぶつかって、思わず二人とも、よそ見。
 口元を押さえ、肩をふるわせるキースロンとシーサー、サマーン。何がおかしいのよぉっ!
 ま、お二人さん行ってらっしゃい。さ、てと。ホットミルクでも飲んで寝ようっと。


2.

 いきなり彼からのTEL。息せききった声で、『ブライト大佐の家へ行くから、一緒に来いよ!』なんて言ってきて。何かと思ったら……ドンチャン騒ぎですってぇ?

 何でも今日ついたシャトルで、あの──あの! カミーユさんと、彼と一緒に地球へ降りていたファさんって人が帰ってきたのだそうだ。今日はその関係で、フォン・ブラウンに居るアーガマのメインクルーを集めてパーティ。『私も良いの?』ってきいても、『良いから、良いから……』ってきかない。もう心は本物の『うわの宇宙』になっちゃいそうね……

 操縦系第三分室での話題の人の一人に直接会ってしまった。皆は皆でポイポイお酒のビンを空けている。ブライト大佐とアストナージさんは冷や汗たらたら。私は自然〜と、アンナさんとファさん、の方へ寄っていく。

「はじめまして。ミリィ・チルダーっていいます」
「ファ・ユイリィです。どうぞよろしく」
 短い言葉だけど、語調がしっかりしていて……さすが、って感じ。やはりあの『グリプス2の戦い』をくぐりぬけた人ってのはどこか違うんだなぁ。でも、何だか皆明るい人ばかり。殆どのクルーがまだ軍に残っているのだけれど、戦争の暗さを感じさせない。しかし……いーのかしらぁ、あんなに飲んじゃって……

 女同士の会話がはずんで、男同士のお酒がはずんで。そしてとうとう一人がケラケラケラ……と笑い出し、その場に倒れてしまった。
「とっ……トーレスぅ?」
 私、思わず駆け寄って。ファさんはしばらく顔を覗き込んで、脈をみた。
「大丈夫。心配ないわよ」
 私、大きな息をついた、ら……
「──ったく、だらしないんだからな」
 ケロリ、としたその声の主は……あの中で最年少のカミーユさん。えっ?
 そしたらトーレス、起き上がって、
「おらぇなーっ。らったく、口のききらたは変わってらいんらからーっ」
 カミーユさん、ちっとも動じずに、「そうかい?」なんて言って、トーレスを起こした。

「しかし本当に強いよな、お前は」とキースロン。
「『アーガマで一・二を争う』って修飾語句は伊達じゃあないってぇのもまーんまかよ!」と、トーレス。
「おい、よせよ……」と、カミーユさん。目は微かに笑っている。
「MSと酒らけじゃあねーぞ、カミーユぅ」
 トーレスぅ……目が完全に酔ってるわよぉ。
「ポーカーだろ、ブラックジャックに……あとおん」
 そこまで言った時、トーレスはまた床に伏せた。
「何もそこまで言うことないだろ!?」
「らからって修正するこらぁねーだろ。っらく、手がはえぇんらから……」
 カミーユさん、目を閉じて息をついて、謝った。
「──ごめん、」
 さすがに、トーレスも素直に、
「いや、俺も悪らったよ」
 そんなトーレスの顔を覗き込んでいて、ふっとカミーユさんの顔がゆるむ。
「まだろれつが回ってないぜ。水貰って来ようか?」
「頼む」

 その時、一番キッチンに近かったのは私。一足先にブライト大佐に断って水を取りに行って、トーレスに渡した。
「あ・さんきゅ、ミリィ」と、トーレス。まばたきして、目をこすって。ふと目を落とした先、腕時計。
「だーっ、もうこんな時間かぁ」
「何かあるのかい? トーレス」
「仕事がさ、明日早いんだよね」
「それは大変だね」
「じゃ、そろそろお開きだな」
 さすが『キャプテン』の修飾語句は伊達じゃあない。ブライト大佐の一言で、皆片付け始めた。


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