Camille Laboratory Top機動戦士Ζガンダム>創作小説>ring-rang-rung

「それでね、兄さん」
 アルテイシアはいかにも年頃の女の子が好みそうなラッピングを施した包みを差し出した。
「プレゼントよ。開けてみて」
「ありがとう……ふうん、これは綺麗だ」
 中から出てきたのは、小さなガラスのベルだった。隣町のアンティーク・ショップで見付けたのだとアルテイシアは言う。そして一旦口をつぐむと、少し思い詰めた表情で続けた。

「兄さん、最近は何だか空ばかりを見ていて……私が声を掛けても気付いてくれないのだもの。兄さんには私がいるのだから、そのことを、忘れないでね……」
 ベルを鳴らすと涼しい音が周囲に響く。空色の瞳をした妹の笑い声のように──。

◆     ◆

 シャアは改めてベルを見直してみた。華車な持ち手が付いているかいないかの差異はあるが、本当によく似ている。

「アルテイシアがか……まさかな」

 そう口にしてはみるものの、可能性は否定仕切れなかった。何しろこのアーガマの艦長はブライト・ノアなのだし、自分がつい先日地球から帰還する際に世話になったアウドムラにはハヤト・コバヤシと……アムロ・レイがいる。

「忘れているつもりはないのだがな」

 シャアはベルを鳴らしてみた。透明な音色は、彼を追憶へと誘った。


<おまけ>

 軽い、軽いノックが響く。
 追億を邪魔されて、つい「どうぞ、」とぶっきらぼうに答えると、私服のカミーユが嬉々として戸口に立っていた。

「パーティが始まリますよ、私服でどうぞ」
「私服で……? 一寸待て、」

 半ばその気でめかし込んだシャアに先立って歩きつつ、カミーユはこんな事を言った。
「すごい数のプレゼントでしたね」
「置き場所に困っているんだぞ、こっちは」

『か……かわいくないっ』
 カミーユは、我知らず眉根を寄せていた。
 はっきり言って嫌味のつもりだったのに、こんな風にいけしゃあしゃあと返されては面白くもなんともない。すぅ、と小さく息をつき、静かに口を開く。

「いいじゃないですか。僕もそう思って、場所をとらないプレゼントを差し上げようと思いましてね。どの道、最近ごたごたしてしまっていましたし……」
「ほぅ……何かな」
 そこでカミーユは歩を止めた。振り返ってシャアに向くその目に何かを感じた彼は、思わず身構えた。そんな彼にカミーユはにっこり笑って──シャアに言わせれぱ、小悪魔のように笑って──口を開いた。

ですよ、。尤も、もう27もあるんですから、一つ差し上げたってどーってことないんでしょうけどね」

 それだけ言うと、カミーユはまた歩き始めた。奴には、自分も一つ年を取ったという自覚などこれっぽっちもないのだろうな。いや、あってたまるか! と、シャアは見えぬ怒りを少年の背中に投げつけた。

 誕生日なんて大ッ嫌いだあーっ!


(9011.11)



あとがき

 赤い人のお誕生日話。28歳のお誕生日っつーよりは、お子様の頃の回想の方が何気にメインですが。しかしま、頑張って赤い人を書こうとしてるのがよく分かりますねぇ……青いって良いですね(^^; 本編よりおまけの方に力入ってるよーな気もしますが、やはり本人楽しんで書いてるとウケてくださる方もいらっしゃって嬉しいものです(^^)
 「不文律」もそうなんですが、この二人でお笑いというのは、書こうとして書けるものでもないので、書けて嬉しかったなぁと。

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