Camille Laboratory Top機動戦士Ζガンダム>創作小説>今日は何の日?

「モニターだとか、鏡面に……真っ白な頭の自分が見えるんだ……」
「まぁひどい! 冗談にも程があるだろう、お前達!」エマリーは本気でトーレス達にかみついた。トーレス達も本気で身を引いた。
「ただ、私室の鏡だけはちゃんと映っていたから、初めは目の錯覚だろうと思ったんだ。だがどうもその後目に見えてその姿がちらつくから、心理的にはめられたな」
「さすがに私室の鏡には細工できませんでしたし、そこで気付いて貰えると思ってたんですよ。本当に……申し訳ありませんでした」
 一斉に頭を下げるブリッジ・クルーに、ブライトは苦笑して、 「冗談一つにも真剣なんだな、お前達は。せいぜい黒髪のままで頑張らせて貰うよ」
「ありかとうございます、ブライト艦長!」

 ブリッジがいつもの空気を取り戻し、クルーはそれぞれの配置に着いた。エマリーとの業務連絡などを終えて、ブライトはようやく落ちついてトーレスに問いただした。
「しかし、あのゴーストは誰の作品だ? 殊勲賞ものだったぞ」
「ああ、あれですか……イーノに手伝ってもらったんですよ」
「なるほどな。しかしよくやる気になったな、イーノ?」
「初めはやっぱり気が引けたんです」イーノは恥ずかしそうに、消え入りそうな声で答えた。「でも、作りかけのプログラムが、それは見事なものだったから、つい……完成させたくなって」
「作りかけ? 誰の?」
「ゴーストが出たって驚きそうもない奴のですよ、艦長」トーレスが囁くような早口で答えた。「あいつはメインコンピューターへのアクセスコードを持ってましたしね」
「あいつがそんな事をしていたとは知らなかったぞ。気の長いことを……」
「初めはハロウィンに合わせるはずだったんですよ。まさかエイプリル・フールまで持ち越すとは夢にも思ってなかったでしょうけどね」
「そりゃそうだ。私だって思っていなかったさ」
 暗礁空域を航行しながら、彼らは目に見える現実を前に、追憶の海に心を向けていた。

「それはそうと……エマリーさんはずっと艦長と一緒にブリッジに来てたんでしょ? なのにゴーストはちらりとも見なかったんですか?」トーレスが話題を変えた。
「えっ……? 私は何も……」ほのかに類を染めて、エマリーはしどろもどろに言葉をつむぎだした。
「見えてる訳ないよなあ。だってエマリーさんにはブライト艦長以外見えないんだから」
 トーレスの入れた茶々にブリッジ・クルーは一斉に笑った。笑わなかったのは、言葉に詰まったブライトと、顔を真っ赤に染めて肩を震わせていたエマリーだけである。
「トーレスっ! 前を見ていないと隅石にぶつかるぞ!」
「了解、艦長代理!」トーレスは答えたが、本当にこたえた訳ではない。「星屑になるのに俺たちは邪魔でしょうからね!」


(9204.01)



あとがき

 という訳でエイプリル・フール話、でございました。年表順では後の話になるのですが、こちらが「Imaginary Works」の前振りになっとりました。イーノが使った「作りかけのプログラム」は、「Imaginary Works」でカミーユが抹消する前の状態のバックアップをトーレスが取っていたもの、という裏になってます。私的命題として、「カミーユを出さずにお話は書けるか?」というのがあったんですが、やっぱり無理でした。以後、この命題は封印(^^;

 んがしかし無理が……無理がありますよこの話。ゴーストがどーたら以前に、アーガマの時計いじって、その最中に戦闘でもあったらどないする気でしたんブライトさん? ってぇのが。ま、見かけの時刻だけダミーにして本体のクロックはそのままとかいうものだとは思いますが、何だかなぁ。

 あと、初期の文章に共通した特徴なんですが、「宇宙大作戦」小説版の日本語訳の影響が強いもので、これは特にそうですね。凄く意識してます。ま、これは無理もないことなんですが。「日誌の口述」というのもそうですし。ΖΖで日誌が出てくるのは#1「プレリュードΖΖ」くらいなんですけどね。

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