Camille Laboratory Top機動戦士Ζガンダム>創作小説>First Contact

 慌てて辺りを見回すと、ドリンクのカップを二つ持った彼がこちらに向ってくる。そういえば、目の前のテーブルからトレイも消えている。
「コーヒーで良かったか?」
 そう言ってカップを置く彼の顔は、まるで何事もなかったかのようだ。
「あぁ……ありがとう、」トーレスが座り直すのを待って、口を開く。「さっきのことなんだけど、ブリッジで何か聴いてる?」
「お前な、さっき言ったばかりだろーが。他人のこと気にすんなって」
「それとこれとは話が……」
「一緒だよ!」その剣幕にカミーユは息をのんだ。「お前が故郷のコロニー出てきたのは、まぁ多少成り行きというものがあったとはいえ、お前自身の意志だったはずだ。違うか?」
「――違わない」
「ならさ、それを貫いてみろって。そんなに他人のことばっか気にしてると、しまいに自分のことまで見えなくなるぞ? 自分の事は自分でして、他人には助け舟は出すが、その舟はこいではやらないっていうのがここの流儀だ。しばらくは従って貰うぞ?」
「分かったよ。」カミーユは微かに笑んでみせた。ついトーレスはその顔を覗き込む。
「……どした?」
「いやさ、こんな風に真剣に怒鳴って貰ったのってさ――ありがとう。」
 真っ直ぐに見詰め返されてそう言われると、却って言われた方が気恥ずかしい。
「どういたしまして、と!」
 もう他には誰もいなくなった食堂でトーレスは立ち上がった。
「悪いけど俺、ブリッジに戻るから……何かあったらコールしろよ?」
「あぁ、そうさせて貰うよ。――カードも誘ってやって?」
「了解。皆に声掛けとくからさ、オフになったら呼びに行くからな」
 カミーユが頷くのを認めて、トーレスは付け加えた。
「ワケ有りなのは分かるけどさ……自分の人生、自分にしか生きられないんだから……大事にしろよ」
「ありがとう」
 かなり急いでブリッジに戻ってゆく後ろ姿を見送りながら、カミーユは二人分のカップを手に自分も席を立った。


(9010.21)



あとがき

 「赤い祝福」から引っ張った訳ではありませんが、カミーユがアーガマに来たあたりのお話です。トーレスと最初に出会った場面、なんですが〜うわぁ。いや何かこう……青いですねぇ。としか言えないんですが。話数でいくと#5「父と子と…」の直後ということになってます。あれだけ泣いてたのに#6「地球圏へ」であっさり立ち直ってるカミーユに何があったんだ? という話ではあるんですが〜あの人って泣くだけ泣くとけろっとするもんよー、とも思うんですが、まぁこういう話があっても良いかなと。だから、青いの!

 因みにタイトルが大袈裟だったりとか、台詞と地の文の混ざり方とかはこの頃傾倒が激しかった「宇宙大作戦(スター・トレック)」のノヴェライズの影響。まだちょっと自分の文体が確立する前なんですねぇ、って今も出来ているのかはよく分かりませんが。でも模倣は必ず通る道なんで、敢えてそのまま直さずに。

 ……その後、2005年公開の劇場版1でも同じあたりの話「眠らぬ夜の海で」を書いてみました。パラレルってことでやってることは基本的に同じなんですが(^^; よろしければ読み比べてみてやってくださいまし。


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