Camille Laboratory Top機動戦士Ζガンダム>創作小説>Imaginary Works

 そうすると、先刻のファの言葉が思い出されて、思わずカミーユは身を引いた。ファが言いたかったのは、この事じゃないのか? 最近俺は真っ直ぐに物を見ようとしていないのじゃないのか? 何か、そう……目の前の現実から目をそらしているようで。
『俺は、幻を追いかけている……?』
 そんな言葉がふと浮かぶと、堰を切ったように様々な記憶の断片がなだれ込んでくる。辛くないと言ったら嘘になる、逃げだしたくないと言ったら嘘になる、だからと言って、このまま何もせずに耐えなければならないなんて、そんなこと出来る訳がない。俺は、そんなに強い人間じゃないんだから。でも……

 カミーユはしばらく目を閉じて考えると、プログラムを抹消した。


『あいつに、あやまらなくっちゃ。』
 そう思って飛びだしたはいいものの、角を曲がったところで鉢合わせるなんて、一体運命の神様は何を考えているのだろう。
「ごめん、」
「ううん、私も悪いわ。考え事してて、」
「そうじゃなくて……だから、ごめん。」
 正面からファの顔を覗き込んで、そのまま額に唇で触れた。疑問符と感嘆符を一面に浮かべたような彼女を残して、カミーユはその場を離れた。
『ま、このくらいなら逃げても構わないよな。』
 内心苦笑するカミーユを、クルーはまたいつものことかと呆れながら見送った。

 自分でも可笑しくて、くすくすしながら下を向いて進んでいたから、トーレスが呆然としながら自分を見ているのに、カミーユは声を掛けられるまで気づかなかった。
「ぁ、トーレス?」
「どうしたんだ? 何か良いことでもあったのか?」
 カミーユはしたり顔で、
「まぁね。あ、ごめんトーレス。あの話、なかったことにしてくれる?」
「なかったことって、おい……」
「じゃ、」
 勝手なんだからな、あいつ。口の中で悪態をついてはみたが、カミーユの表情が変わっていたことを思い返して、トーレスは安堵した。これでハロウィン作戦は完了だ。

『子供のお守りも楽じゃないよな、まったく。』
 文句を言いつつも、実際自分も楽しんでしまったことに、トーレスは我ながら付き合が艮いと苦笑した。何時になっても、悪戯は楽しいものだ。出来れば、それなりに、ハロウィンの日にやってみたかった事ではあるが、ああやって匙を投げられてはたまらない。
『ハロウィンの日に、俺たちどうなってるのかな?』
感傷を捨て去って、トーレスはブリッジに向かった。


(9402.06)



あとがき

 ハロウィン話……未遂、みたいですね(^^; 時期としては#33「アクシズからの使者」〜#34「宇宙が呼ぶ声」前後、というあたりではないかと。トーレスの行動がやや作為的かなぁ、というのは、先の「First Contact」の続きの模様です。

 いやしかしっ……初期のネットワーク・ハイだったんですねぇこの頃は、というのが如実に〜。Internetとパソ通触り始め1年生だったんで無理もないんですが。本人の時系列的には、先に問題のプログラムが出てくる話(「今日は何の日?」)を書いてから、戻った形でこれを書いてます。元の話に無理があるんでこちらはさらに無理が込んでいるという〜。でもちょいと修正し辛いんで敢えてそのままです。あーもう恥さらしやーとか思いながらも(i_i) でも何か触ってしまうと別物になりそうな気もしたり、このまま当時の空気を残したい気もしたり。大体本編自体さらに10年前のものなんで、あまり今の感覚で書いてしまうとちょっと違うような気もするとも思ったりしています。


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