Camille Laboratory Topアルジェントソーマ>研究文献

アルジェントソーマ事典

 基本はあくまでアニメ本編。適宜CDドラマ・小説版・漫画版にも触れていますが、何分個人的な解釈なので、そのあたりはご注意のほど。なお、当時のアニメ誌・公式サイト等は未見のため、同じような記述があれば偶然の一致です。


 【あ】 【か】 【さ】 【た】 【な】 【は】 【ま】 【や】 【ら】 【わ】 【項目一覧】

【た】

◇タクト・カネシロリウ・ソーマ

■ダン・シモンズ(Dan Symonds)
Dan Symonds  ザルク1のパイロット。陸軍出身の中尉。金髪碧眼のお坊ちゃん。かつての陸軍第16空中騎兵隊(ライナーによると戦闘ヘリ部隊)で、マイケルの部下の唯一の生き残り。このことと、反発の対象であった父との確執などからか、稀代の負けず嫌いとなってしまう。故郷の妹エレインからは度々メールが来ているが、返事をちゃんと書いているのかは不明。しかし本部壊滅かと思われたPhase:24で、彼が呟いたのはその妹の名であった。
 クールガイで名をはせていたはずなんだが、新入りでやってきたリウとはまるでソリが合わず、突っかかった結果隣同士で営倉に入れられたことも。だが、Phase:13で巨大エイリアン・タイプT1の目前に居るザルク5を目にして「リウ」と初めてファーストネームを口にしたあたりから、仲間として認めるようになったようだ。クールというよりは熱血入ってるように見えて、実は喰えないところもあるってのが凄い。
 リウが顔の右側を隠す髪型なのに対し、ダンは左側を隠す長い前髪が印象的。髪型の造作だけでなく、立ち位置的にもリウの対照にあり、内通者やモルグを巡る会話でのダンの反応は、オチまで見てから見直すと色々と面白い。つか、ほんとよく描けてるんだなぁと。初見時にはすっかり騙されましたが。
 その後スーと結ばれるんだが、この顛末はPhase:EXのEDで語られているので必聴。子安武人はこういう芝居をやらせると絶品だなぁ。6年後は少佐としてフューネラルのキャプテンの要職にあり、地球の技術でエイリアンモーターをフルコピーしたという白いザルクを駆る。のはえぇんだが、制服の配色が左右非対称でないのが何か寂しい。ユリシーズ号を見送る際、スーの肩を抱いてるのに萌えだ。しかし前髪切ったこの6年後のダンはえらい美人になっててちょっとドキドキですよ。
 ダン・シモンズ&スー・ハリスのカップルは、「スタートレック・ヴォイジャー」のトム・パリス&ベラナ・トレスのカップルと通じる雰囲気かもなぁ、とも思ったり。ご存じない方のために解説しとくと、パリスってのは宇宙艦隊提督である父親に反発してて、艦隊士官でありながらゲリラ組織「マキ(Maquis)」に加担したために投獄されてた天才パイロットという、英国系のえぇとこの坊ちゃん崩れ。アンティーク趣味あり。一方トレスは艦隊アカデミーに在籍経験がありながら、やはりマキに転向したはみ出し者とはいえ腕の立つエンジニアという、クリンゴン人の母と地球人の父を持つ混血の浅黒い肌の熱しやすい姉ちゃん(当然この出自にコンプレックス持ち)。このカップルにも最後に娘が生まれてます。どちらもどうぞお幸せに〜。
 因みにダンの容貌はどうにもこうにも、萩尾望都「トーマの心臓」のオスカーを想起させてやまないものではあるが、忌まわしき傷痕を持つ黒髪君に振り回される役所という意味では通じるのかも。母親亡くしてるしな。

◇デビッド・ロレンスMr.X

■天使
 死体置き場葬式棺桶死神だと、縁起でもない名前が跳梁跋扈するアルジェントソーマだが、ちゃんと天使様も出てきますですよ。でもどー見てもフツーのイメージでは使われてないな……(^^;
 【1】Phase:01アバンタイトルから登場する、エイリアンの巨大な光の輪はどう見ても天使の輪。因みに小説版では「破壊の堕天使」という表現も出てくる。
 【2】Phase:01アバンタイトルから登場する、荷電粒子爆撃機の愛称は、ライナーによると「ファットエンジェル」。機体上部の粒子加速器の円環からくる名前だが、あのサイズの加速器にしちゃ相当な威力って気が。Phase:01とPhase:19でしっかりエイリアンを撃墜してるのは、画面に映ってる限りエイリアンの撃墜数ゼロのザルク5より使えてるぞ。
 【3】OP冒頭に登場する二人の天使。天から降って来るマキと、彼女を受け止めようとするもその腕の中で散らしてしまう片翼の天使、リウ。ちょっと出来すぎの感もあるが、この導入は非常に美しい。背中の傷痕は千切れた羽根の跡、というのは「THE ビッグオー」のエンジェルに通じますか。
 【4】OP歌詞に登場する「沈黙のAngel」。
 【5】Phase:03のMr.Xの台詞、「悪魔が最悪の人間を誘い込むには、まず天使の姿で現れるという。信じるのかい? 天使の僕をさ」――よく言うわ(^^;
 【6】Phase:17に登場するリック、彼にとって可愛い女性は全て天使らしい。あ、これだけまともだ。さすがリックだ。

■トート(TOD)
TOD  ドイツ語で「死神」を意味する名を持つ、ザルクの高性能型機。Phase:15でフランクの輸送機を襲った黒いザルクはこれ。形は同じだが黒く塗っただけでえらく格好良くなるのがお約束。しかもこの黒、半端じゃないほんとに真っ黒で、余計な色が使われていないのがまた凄く良い。エイリアンモーターを高出力化したからか、リミッター解除後の制御可能時間が短くなっているようで、Phase:15では比較的短時間でパイロットが自滅、また、Phase:23ではやはり速攻でエイリアン化してしまった。技術者つーか上層部はパイロットのことなど考えとらんな。

■トマト
 Phase:15でMr.Xがぐしゃーっと握りつぶしてみせたもの。黒いザルクのキャノピーが赤く染まって、リウはMr.Xの脅し文句とこのトマトを思い出す。うひゃー。

【な】

■2059年
 物語は2059年4月9日から始まる。何故この年月日なのかは当時の事情を知らないので不明だが、タクトの部屋にある「2057」のペナントについては、スプートニク1号の打ち上げが1957年10月4日であることから、それから100年を記念したものではないかと思われる。
 アルジェントソーマの世界では、この15年前に、星間航法の可能性を探る意味もあり、オデッセウス号に無理な航路変更を強いてまでペンローズツイスターホールの調査に向かわせていて、この2059年にはエイリアンが次々押し寄せて、えらいこっちゃ状態になっている。が、広大なサンライズ宇宙の別の地球では、既に星間航法は確立されており、だがその故に、その世界の2059年の地球人類は、出かけた先で異星人との戦争に明け暮れているのであった。戦火の中の少年少女達を描いたその作品の名は「銀河漂流バイファム」(1983)である。ま、1999年に起こるはずだった様々な出来事から考えれば、2059年で被ってる作品は少ないんじゃないかと(^^;

■ノグチ博士(アーネスト・ノグチ:Dr. Ernest Noguchi)
 ユニバーサル大学生体工学科教授。博士。マキの師である。「ノグチ先生」「ノグチ教授」「ノグチ博士」という呼び分けがはまってて実に気持ち良いんだが、とりあえずこの事典では「ノグチ博士」に統一してある。
 エイリアン研究機関モルグの中心人物で、エイリアンの破片を集めて再生を試みる。鉄の化け物と思われているエイリアンの組成は、彼の解析では人体との符合を示す。自己修復と思考の形成、それはまぎれもなく生物のものであると彼は確信する。「教えてくれ。お前はどこから来た。何て名前だ。どんな言葉を話すんだ」――その実験の目的は、軍事転用などというものではなかった。あくまでも、エイリアンを知り、理解することで、人類の歴史に刻まれた不幸な接触を繰り返したくないという願いに裏打ちされたものであった。
 教え子のマキがタクトに送った空のメール。彼女を探し出したその行動力に期待する、とノグチ博士は言い、タクトをモルグのメインスタッフとして招く。金属工学の素養を見込まれた以上に、探究心と好奇心と行動力を持つものとしてタクトに期待していたのだろう。講義中、マキを誘いに来たタクトとのやりとり(この時ノグチ博士はタクトが宇宙工学科の学生だと認識している)や、実験の1年以上前からタクトの個人記録を集めていたことからも、そのことが伺われる。その契機が、タクトの書いた「宇宙居住者が増加した場合のメンタリティの変化に関して」であるのだろうことは確かで、この論文の内容はタクト自身は気に入ってなったようだが、面白そうではある。
 しかし、フランクと名づけたエイリアンの再生体の覚醒実験は、仕組まれた事故により暴走、ノグチ博士はフランクが生きていることを喜んだ次の瞬間、瓦礫の下敷きになってしまう。最期を看取ったタクトが聴いた言葉は、「教えてくれ、私に……」であった。タクトとノグチ博士の関係はここで終わったように見えて、その実、タクトがリウに生まれ変わった後にこそ、ノグチ博士の影響が強く見られるようだ。
 大学ではあまり良い噂が聞かれなかったようだが、リウ/タクトの記憶に残る彼の言葉は、いずれも印象的なものばかり。生体工学科の先生にしては、異文明の接触といったような文化人類学的な講義をしていたりして、この先生の講義はきっちり聴いてみたい。後にリウが収監された際、独房に持ち込んでいたのはノグチ博士の著書である。いやま、あの時リウが読んでいたらしいのは別の本なんだが、それはさておき。
 何と言っても印象的なのは、Phase:01とPhase:25で繰り返される「言葉は溝を埋めてくれる」だろう。Phase:23ではMr.Xが、そしてPhase:24ではフランクが言い回しを変えて口にするこの言葉は、作品を貫くキーワードの一つになっている。ある意味、リウ/タクトがマキとハティに言い続けた「黙ってちゃ分からないだろ」と繋がっているようにも見えて面白い。ともあれ、このノグチ博士の言葉に耳を傾けたリウは、自らの過去を捨てて新たな旅に出る。それはノグチ博士の遺志を継ぐ行為でもあり、マキの言葉を繋ぐ行為でもある。
 「ゼミの生徒でも講習生でもなかったが、私は君を数少ない教え子の一人だと思っているよ。そう、マキ君と共にね」というノグチ博士の言葉は、リウの見た幻ではあるが、それはリウがノグチ博士を師と思っていたに等しい。実際、「先生、僕は……」なんて言っちゃってるんだもんなぁ、リウ/タクトが。うっかり萌えだ。
 茶風林さんの声が最高に渋くって、ノグチ博士が喋ってるだけでドキドキしますですよ。単なるマッドサイエンティストじゃないのよ。渋いおじさまなのよ。格好良くって萌えなのよ。マキちゃん、君は正しかった。


listbacknextTopアルジェントソーマ