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アルジェントソーマ
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アルジェントソーマ事典
基本はあくまでアニメ本編。適宜CDドラマ・小説版・漫画版にも触れていますが、何分個人的な解釈なので、そのあたりはご注意のほど。なお、当時のアニメ誌・公式サイト等は未見のため、同じような記述があれば偶然の一致です。
【あ】
【か】
【さ】
【た】
【な】
【は】
【ま】
【や】
【ら】
【わ】
【項目一覧】
【ま】
■マイケル・ハートランド(Michael Heartland)
フューネラルのキャプテン。陸軍出身の中佐。実直な軍人を絵に描いたような男。第16空中騎兵隊でダン以外の部下を失っている。またおそらくそれ以前に、第一次遭遇戦のフランクフルト局地戦において、タイプH2のエイリアンと対峙、この時も部下を失いつつ彼は生き延びたということが、その後も彼の心の深い傷となっていることが語られている。
女性の
イネス少佐
より階級も年も上ながら、フューネラルの指揮系統では下位に甘んじる。だが、それは先の経験から、自分はあくまで現場の指揮官でありたいと思ってのことなのだろう。Phase:03、13と身を呈してイネスを守り、またPhase:23では拘束されたイネスを思い「すぐに参ります、コマンダー」などと呟くのが何かもう格好良すぎで困る。
Phase:02で
モルグ
の事故現場でスペシャルエクスプロウジョンの弾を拾ったことから、この事故に陰謀の匂いを嗅ぎ取り、Phase:15でリウを襲った
黒いザルク
、そしてその後繰り返されたモルグの事故と続く「偶然」が、Phase:20でトートという現実となって現れた時、彼の中で一繋がりの「必然」となる。どの時点で気付いたのかは明らかにされていないが、Phase:22ではリウをタクトの名で呼んでみせた。
小説版
でも最初に気付くのはマイケルだしな。って小説版については敢えてここではこれ以上語るまい。
その後宇宙軍へ転属となり、大佐へ昇進して謎の星雲の調査に旅立つ
ユリシーズ号
の船長となる。リウが軍刑務所を出てから連絡が取れなくなった、という言い方をしているので、刑務所に居る間は連絡を取ってたんだろうな。じゃなきゃ話が通じないんだが。第一航法士ってそうそうなれるものじゃないと思うのに、服役中の人間のためにこのポストを開けて待ってたんだねぇ……。出発前のイネスとの交信が、いかにもらしくて、イイ。
海外ドラマでは普通に出てくる黒人のアメリカ人なんだが、日本のアニメじゃ珍しい印象が。中田譲治さんの声が本当に格好良くて萌えだ。
■マキ・アガタ(Maki Agata)
ユニバーサル大学
生体工学科の学生で、
タクト
とは恋人同士。尤もPhase:02での出会いで描かれているように、タクトからのアプローチであり、どちらかというと言葉少ないマキは相当振り回されていたんじゃないかとも思ったりする。実際、タクトの浮気が発覚した時には、「嘘つき」なんて言葉で非難しているのだ。しかしそれを、口にせず文字で書くのがマキらしい。
「あんまり良い噂聴かないんだよな」などとタクトに言われるノグチ博士を「優しい」と言って慕うマキは、心底ノグチ博士という人を解っていたのだろう。タクトが面白くないと思うのも仕方ないんだが、そんなタクトを「大丈夫です、タクトなら」と信じている、それがマキの本当の強さとも思える。
しかし、マキとタクトの言葉はその後通い合うことはなかった。モルグの事故によりマキは無言のままこの世を去り、失われた言葉が彼に届くのは、6年後のことであった。……何ちゅう話や(i_i) いやさ、このメールの内容ちゃんとPhase:01で出てくるんだけど、タクトは気付かなかったんだよね。……馬鹿。って、あの状況じゃ無理もないんだけど。てゆか、気付いてしまったら、この壮大なすれ違いと勘違いのドラマが成立しなくなっちゃうんで。ともあれ、このタクト/リウの6年間にあって、死んでしまったことで最強の地位を確立していたのがマキであることは間違いない。
タクトの親友
リック
曰く「メガネの天使ちゃん」。いわゆる知的美人だが、微笑がどうにもチャーミングで可愛い限り。タクトが熱を上げるのも無理はない。スレンダーながら、ちゃんと出るとこは出てて引っ込んでるとこは引っ込んでるのに、白衣が可愛いってのは困るなぁ(^^; 一番露出度高かったのって、赤いワンピースを雨に濡らしたからってタクトのシャツ借りてた時かな(そりゃ設定レベルの話だ)。あのワンピースとブーツは何気にハティに合わせてますね。二人ともツーショットの写真を飾りまくって、らぶらぶぶりをアピールしているが、タクトがちゃんと写真立てとかボードに飾ってるのに対し、マキはその辺にテープで貼ってるだけというのが何ともはやである。あと忘れちゃいけないのが、タクトの室内プラネタリウム。あれマキちゃんからの誕生日プレゼントなんだよね。
CD「if」
の「Epilogue」での会話が幸せすぎて萌え。とにかくマキちゃんは何かよくわからん勢いで萌え。桑島法子のキャラでは一番好きかも。
余談ながら、「アガタ(Agata)」って、良く見たら最初の2文字「Ag」って銀の元素記号じゃないですか。やられた〜。
■ミグ25改
Phase:01アバンタイトルから登場する国連軍の戦闘機。画面に映る、一番戦闘機らしい戦闘機はこれ。Phase:17では救助要請を受けた成層圏迎撃機をエスコートするためにダンとギネビアが乗っており、Phase:18ではザルク3を処理するための熱核弾頭を装備したミグ25改の編隊が登場する。
しかしミグ25つーたらソ連の戦闘機だったよなーと思って確認してみたが、1970年代のもののようで。冷戦の頃のソ連の主力機の後継機が堂々と2059年のアメリカの空を飛ぶってのは、日本人ならではの映像なのかも知れんが(^^; でも70年代の設計、80年代の製作のスペースシャトルと殆どデザイン変わってないものも、ちゃんと2065年でも飛んでるからなこの作品じゃ(ま、こういうのは変えようがないってのもあるが)。全くの余談ながら、「ネイビーファイル」で、海軍のF-14乗りだった主人公がロシアへ赴きミグ29に乗る話があって、「ミグには乗ったことはないが、トムキャットと同じようなもんだ」とか何とか言ってあっさり乗りこなすのには燃えた。
■Mr.X(デビッド・ロレンス:David Laurence)
モルグの事故で重傷を負った
タクト
に
フランク
への復讐を囁いた謎の男。彼はタクトにリウ・ソーマの名を与え、フランクが収容されたフューネラルに送り込んだ。その交換条件は「君と僕との愛の交換日記」こと、フューネラルの内部機密の漏洩。Phase:15で「あれはもう止めた」と言うリウに契約の言葉をちらつかせ、「君が復讐の炎を燃えたぎらせていてくれればいい」などと言って、彼は「タクト・カネシロ君」にニヤリと笑ってみせる。
初出時の青林檎をはじめ、常に何か食べ物を手にしており、白いスーツに赤と青の派手なシャツを着込み、赤い長髪にヒゲ面という、こんな格好で一体どんな顔して出歩いているんだろう(あんな顔しか有り得ないんだけどさ)などと考えてしまうような風体の人物。神出鬼没、食欲旺盛、演出過剰、正体不明、人気絶頂にして、シェイクスピアを諳んじ、芝居がかった言動でリウを翻弄するかと思えば、Phase:11では向かってくるリウを片手でねじ伏せる、技あり一本の自称優男。
しかしその正体は、かつて親友ユーリの乗る
オデッセウス号
に、無理な航路変更を伝えることになったデビッド・ロレンス中佐であり、元第二航空宇宙軍司令官・少将の肩書きを持ちながら、その事件の故にか幽閉されているはずの人物だった。イネスとも面識が無い訳ではないらしく、イネスが空軍で教官を務めていた頃に、パイロットになりたいというギネビアの夢を叶える手助けもしている「あしながおじさん」。また、自身もパイロットとして腕の立つ人物であるようだ。つか貴方って人はあらゆる意味で格好良すぎだ。
Phase:23で、
ユリシーズ号
が弾道弾として発射されるのを阻止すべく、議会に介入。しかし特殊部隊により「処理」されたと報告され、「命と引き換えに」なんてイネスの台詞があってはもう誰もが諦めただろうに、Phase:25にてしっかりその後姿が登場。足を傷めたようではあるが、あの特殊部隊が取り囲んだ後の銃声、やられちゃった訳ではなかったのね。さすがだわ。惚れ惚れするわ。
で、結局彼が何を意図してタクトをリウに生まれ変わらせたのかについては、「ノグチ博士の言葉が失われるのは惜しい」と答えるに留まったのだが、リウが旅立つ際に託したものから考えると、おおよその見当はつく。どう考えても生きている中では作中最強の人物である。ちゃんとタクトの部屋の家賃を払ってくれてたのもイイぞ。
GXスキーから一言言わせて貰えば、何せお声が竹村拓さんなんで、若き日のロレンスはまるでランスロー声でドキドキもの。そういえば赤毛だし、Phase:22であの調子だし。えぇですわほんま。超萌え。《RELAX》の戸部公爾さんの芝居が好きな人ははまるんじゃないかと。
■ミステル T-1(MISTEL)
フューネラルの指揮機で
ザルク
の母機。つても内部に収容してる訳じゃなくて、くっつけて飛んでるだけなのが新鮮。ブーメランを思わせるV字型のシルエットが美しい。が、その故にザルクは3機しか搭載できない……かと思ったら、Phase:12-13ではザルク5用のマウントを本体上部に追加して(右から1、4、3と積んだ、4の真上)、4機全部積んで行ってるじゃないですか。でもスーちゃんはザルク4積んだままミステルに居残りなんですが。
んで、そのマウントのアームをうにーっと伸ばして、「イジェクト!」で分離発進するザルクにはとにかく燃える。定番BGMの「Departure」がまたイイんだよなぁ。
Phase:23で大活躍のスーちゃんが、そのミステルのザルク用マウントを利用してトートを強制収容してぶわんと振り回してがつーんと本部にぶつけて撃墜したのはほんと凄かった。ザルクを知り尽くしてて、ミステルを手足のように扱えるスーちゃんだから出来た芸当。ザルクとの対比からすると幅/全長が80〜100mくらいあると思われる「こんなデカブツ」でよくやった。これだけの大きさのVTOLってのも凄いような気が。
小説版
では滑走路が使えるなら使うとなっているが、アニメ本編ではついぞ使わなかったような。Phase:16で「短距離滑走路での離着陸を試してみるか」って台詞は出てくるんだけど。Phase:23のタッチダウンはちょっと微妙。
んで、スーちゃんは撃墜したトートに移乗するってんで、ミステルを引き継いだマイケルが、ギネビアのザルク2を救うため、主翼にエイリアントートを引っ掛けて持ち上げてうりゃーっとふっとばしたのも凄い。そういえば火器積んでないよねこの飛行機(ライナー掲載の片山監督のラフにも
「武装はしていない」
とある)。小説版にはあるんだけど。
Phase:16から改良型となるが、見た目の違いは本体と主翼に引かれた赤と白のライン。放映版で色がなかったのがDVDであったりするのって結構目に付くんですねぇ。つかPhase:12-13のザルク4機搭載可能版こそ改良型なんじゃ……。
んで、この名前もドイツ語。意味は「宿木」で、あれっ法則から外れるじゃんとか思ったら、第二次世界大戦時のドイツ軍の親子飛行機の名前が由来の模様。子機(大)の上に母機(小)を乗っけて、母機からの誘導で爆弾としての子機をぶつけるという、いかにも末期のモノだなーというシロモノなんですが……。ライナーでの片山監督のインタビューに
「飛行機の場合は左右非対称な機体というのは結構第二次世界大戦中のドイツ軍の機体とかにありましたので、そのあたりをベースにしています」
とあるので、こういうの調べ始めたら面白いかも。
■ミートソース
Phase:09でギネビアが営倉に運んできたオムレツに掛かっていたもの。ザルク2のパイロットの顛末を知っているかとリウに尋ねたギネビアが「現場に居た人間はしばらく食事も取れなかったから」と話した後に画面に映っているのがコレである。放送コードがあっても、描き方なんていくらでもあるということ。
■モルグ(MORUGUE / MORGUE)
「死体置き場」の意味を持つ名の、エイリアン研究施設。ユニバーサル大学生体工学科のノグチ博士が中心となり、エイリアンの破片を集めて完全体を再生させる実験が行われようとしていた。マキはノグチ博士の助手としてメインスタッフを務めており、マキを探して奔走したタクトもこの場に連れて来られてスタッフとなる。覚醒実験が始まって間もなく、原因不明の突入電源により実験は暴走状態となる。覚醒したエイリアン(
フランク
)は何処へか去ってしまい、実験のスタッフはタクトを残し17名全員が死亡した。
その半年後モルグは再建され、意識が戻らないフランクが再び運び込まれて再度の覚醒が試みられる。しかし忌々しい光景は繰り返され、フランクとハティ、そしてリウだけが墓所からの生還を果たした(んだよなぁ、多分)。
最初のモルグの事故後の調査にあたったマイケルが拾った特殊な銃弾が、事件を紐解く鍵となった。タクトが事情聴取で語った「事故」の言葉は記録では改竄され、真相が形を見せるのは黒いザルク・トートの再出現を待ってからのことである。
画面に出てくるのは「morugue」だが、原義の単語の正しい綴りは「morgue」。英単語だが起源はフランス語。DVD封入ライナーの美術設定によると、奥に「セメタリー(cemetery:墓地)」と呼ばれる不要パーツの処理場がある模様。徹底してるなぁ。そういえば、Phase:01で出てくる警告は「UN AIRFORCE AREA」で国連軍・空軍の管轄みたいだが、Phase:16ではフューネラルのエンブレムが付いてる警告が出てくるのは謎。
【や】
◇ユーリ・レオノフ(Lurii Leonov)
→
フランク
■ユニバーサル大学(Universal University / Galactic University)
アメリカ中西部にある大学で、タクトとマキ、そしてリックはここの学生だった。ノグチ博士の他に、Phase:23でもこの大学の関係者が出てきていたりする。キャンパスは軍の基地に隣接しているようで、タクトが自転車を走らせている時など大抵後ろをミグ25改が飛んでくし、学内に軍人が居るのも不思議ではない模様。具体的な所在地については、Phase:02でのモルグ事故現場での報告書にあるタクトの住所がコロラド州デンバー(北緯39.45°西経104.52°)だということと、Phase:07でのエイリアン降下地点がアメリカ中西部なので多分その辺りじゃないかと。余談ながら
小説版
ではデンバーには別のものがあるんだが。
タクトは宇宙工学科41期生でリックの同級生だったのが、Phase:01の時点までに金属工学科へ移ってしまっていた、らしい。というのは、Phase:02でマキに自己紹介した時も、Phase:04でノグチ博士から自分の名を言い当てられた時も、出てくるのは「宇宙工学科」だからである。「金属工学科」の名がはっきり出てくるのはPhase:08での新聞で、Phase:01に登場するタクトの研究室の学生が「ソーマ」の記事に出てくる箇所だけなんである。宇宙工学科のタクトと生体工学科のマキの出会いのきっかけになった、二人が一緒に居たゼミで、タクトは例の論文を書いたんだろうか?
CD「if」(Epilogue)
でも同じ講義取ってるみたいだしなー。その割に、タクトはノグチ博士の講義はまるで取ってなかったみたいだが。
ロケット発射実験場を持ち、この大学が失われればこの国の宇宙開発は相当なダメージを受ける、というような話をPhase:07でマイケルがしているが、それを聴いて大学のことを思い出したリウが、ロケット発射実験場にあった液体酸素をタイプM1の撃退に使用する事を進言する。この時スーも口にはしているが、手際が良すぎるというのはあからさまに怪しいよな。んな事言っちゃおれんかったんだがなあの時は。
最頻出なのは、タクトとマキが出会った思い出の場兼いつものデートスポットである、三段式ロケットのモニュメント。ここも悪くはないんだけど、タクトの研究室とか、ノグチ博士の研究室前の廊下とかの雰囲気が良い。資材搬入のこともあってか、通常の2倍の広さという感じもするけど、工学部の廊下ってこれ、という感じで。ほんとこの作品、美術が凄い。
あまりにもアカラサマなんですが、「Universal University」=「宇宙大学」ってことでこれも
萩尾望都
の「11人いる!」ネタ。北米版では「Galactic University」になってるようなんですが、確かに宇宙はユニバースでなくマルチバースだろという昨今の状況と、語呂の問題からなんでしょうか。でもこれじゃ「銀河大学」になってしまって銀が1つ増えてしまいますよ(^Q^)
■指輪
作品に散りばめられた記号の一つ。タクトとマキ、ハティとフランク、ユーリとクローカ。3組の指輪とエイリアンの落し物。薬指に指輪をはめた物言わぬ左手の図が繰り返されるのは、様式美ではあるんだが悲しい。そして、Phase:25で彼と彼に会うためにに旅立つハティが、クローカの墓前に捧げた「花の指輪」も美しい。でもあの墓碑に指輪が埋め込まれているのにはライナー見るまで気付かんかったよ……。
ただここで一つ疑問が。例の指輪の刻印は、「TO LURII FROM KROKA 2046.9.15」である。オデッセウス号が出発したのが、ライナーでは15年前となっていて、とするとこれは2044年のことになる。ユーリが出発する直前のクローカの台詞で「6年間」という言葉が出ていることからすると、二人が結婚したのは2038年のことになりそうな気がするんですが。はて?
そういえばPhase:19で、エイリアンの落し物の指輪を回収しないまま、謎の武装集団から逃げるフライヤーの中でのダンとスーの「エンゲージリング」を巡る会話は、ひょっとしてこの二人にとっては伏線だったんだろうか?
■ユリシーズ号(ULYSSES)
Phase:01で飛来したエイリアンがその影を落としていく、建造中の宇宙船。伝説の宇宙飛行士ユーリらを乗せて消息を絶った深宇宙探査船
オデッセウス号
の発展型。名前もオデッセウスの英語名。タクトとリックにとっては夢の船であり、かつてユーリとロレンスは、後に続くこの船を宇宙へ飛ばすために、無理を承知でオデッセウス号の航路を変更した。
だが因果は巡り、全高8000kmのエイリアンが迫るのに、ユリシーズ号は恒星間弾道弾として打ち出されようとする。その改造は、議会の承認を得ないまま防空予算の30%をつぎ込むという軍部の独走によって、ほぼ終わっていたというものだった。しかしフランクの飛翔により、ユリシーズ号は守られる。
6年後、「彼」が帰ってきた姿と思われる謎の星雲の調査に派遣されることになり、マイケル・ハートランド大佐を船長として、ハティ(航海士)、そしてリウ(第一航法士)が乗り込む。地球側の管制はスカーレットで、ユリシーズ号に乗ってるのはツィノーバじゃないか?(声はアイちゃんなんだけど) フューネラル関係者ばかりで、イネス上院議員の身内人事だなーって印象もなくはないが、あくまでも「彼」を知るものとして、この帰還のあてのない旅に集まったということなのだろう。降りた者も多いという話だし。彼らの航海に幸いあれ。
■妖精
普通羽の生えたフェアリィ(fairy)を想像する所だが、この作品での妖精は、ハティの祖父がかつて戦場で見た同僚の変わり果てた姿であり、死者の魂(spirit)を具現したものを指す。そのため、その姿は異形のものであり、フランクを初めて見たハティは、「おじいちゃんの妖精」だと思い、「妖精くん」と呼ぶようになる。「fairy」も「spirit」も共に「妖精」の訳語を持つが、どうも海外では「elf」を訳語としてあてているようだ。
そんな妖精くんと一緒にフューネラルを逃げ出したハティは、ガーフィールド軍病院で別の「妖精くん」に出会う。それは重傷を負ったタクトであり、体中を包帯で包まれ、左腕はギプスで膨らみ、右目だけが包帯の間から覗いているというその姿は、まるでフランクの映し絵であった。そのタクトがリウとして生まれ変わり、「妖精くん、か……」と呟きつつ、変わり果てた自分の顔を薄い笑みで見つめてるのが、何かもう、恐くって素敵だ。
そしてハティが次に出会った妖精は、タクトの名を捨ててフューネラルにやってきたリウだった。彼を一目見た途端ハティは踵を返して走り去り、「さっき会ったばかりの妖精さん」の絵を描く。このときのリウとフランクの初対面で、互いの片目だけを交互に映す演出が相似形を強調していて小憎らしいまでに好きだ。
しかしPhase:05では、「あなたは妖精くんなんかじゃない、嘘つきの悪者くん!」とリウをなじるハティ。だが様々な確執を経て、フランクへの復讐が的外れなものであったと知り、自分を見失うリウに、ハティは告げる。「リウは昔、悪い妖精さんだったんだね。でも今までたくさんフランクとハティを助けてくれたから、今は良い妖精さん」その言葉に救われたリウは、ハティの小さな手を握り締めて泣いてしまう。そこへ「そして妖精の王オーベロンが歌う」と、天の声が響くのが良く出来てるよなぁ。
ハティの祖父の話は、「妖精の国」の物語を生み出す。ハティは両親と祖父が居る妖精の国を求めてその心を彷徨わせるが、Phase:13でフランクと皆の居るフューネラルが妖精の国だと悟る。しかし本来の話からすればそれは死者の国であり、現実問題として死者の国に囚われていたのは寧ろリウの方とも言える。
これとは別に、ユーリの見た「妖精の光/妖精の国」も登場する。それは宇宙の果てで出会った光であり、ユーリのクローカへの想いを地球に届ける力を与えてくれたものだ。しかしその結果彼が得た姿は、地球人類には巨大なエイリアンとして映り、互いに不幸な衝突となってしまう。全高8000kmのエイリアンが近づく中、三度目の覚醒を果たしたフランク/ユーリは、その「妖精の光」によって自らの全ての分身を一つに集めてゆく。世界を優しくまばゆい黄金色で包む妖精の光にはしゃぐハティの隣で、本物の錬金術を目の当たりにするリウ。ハティの体に残っていたプライマリーエイリアンの破片も光となって体外に出て、「お別れ」になるシーンはお約束だが綺麗だ。これはアニメでなきゃ見れられない美しさなんだよな。そして彼は、宇宙へと飛翔していった。
■予算
本編からCDドラマまで、随所に出てくるこの単語。予算確保の名目でユーリは宇宙の果てにほっぽり出され、予算が厳しいからオペレーターガールズは給湯室でも溜息をつき、予算がケチられているからペンキの質が悪いんだとスーは決めつけ、モルグの再建に一個師団分の戦車が賄えるだけの予算がつぎこまれ、予算審議の時期だからと軍部は都合の良いことを言ってると思われ、その軍部が議会の承認を得ないまま防空予算の30%も勝手に使っていたことが判明したために議会は紛糾しかけ、ユリシーズ号に回されていると思われる分フューネラルの予算が削られて妻子を抱えたダンは将来にそこはかとなく不安を抱くのであった。何つーか、やってたのって戦争というより政争なんだよね……。
これだけ色々出てくると、つい、この現場も大変だったんだろうなぁとか思ってしまうのが何である(^^; 今更ながらお疲れ様でした。素敵な作品をありがとう。ほんま……。
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